夫婦間で子供の親権につき争いがある場合には、家庭裁判所で離婚調停を申し立てるという方法があります。まずは、夫婦間で子の親権者をどちらにするか話し合い、離婚協議が決裂した場合に離婚調停を申し立て、その中で親権の話をする流れが多いです。そして、調停でも決まらない場合には、離婚訴訟を提起して、その中で裁判所に判断してもらうことになります。
離婚協議を重ねて散々話し合ってきたものの、夫婦間での話し合いでは離婚や親権が合意できない場合には、協議離婚をいち早く切り上げて離婚調停の申立てをしましょう。離婚調停は、月1回くらいのペースで進むため長期化することも多いですが、我々弁護士のところに相談に来る方の多くは、当事者同士で離婚の話し合いを半年も1年もしているケースが散見されます。解決の目途が立たない場合には、いち早く家庭裁判所で離婚調停を申し立てすることをお勧めします。
実は、「子供の親権を取れないならば離婚しない」という主張は、弁護士への相談として非常に多く聞く話です。日本には、共同親権制度がないため、夫婦が離婚する場合には、必ずどちらかを親権者として定めないと離婚できません。
もっとも、相手方が「子の親権を渡さないと離婚しない」と言ったとしても、必ずしも応じる必要はありません。離婚は、離婚原因があれば離婚裁判で判決が出ます。その際に、裁判官は、夫婦のどちらが親権者に相応しいのか同時に判断します。
離婚協議中に相手方が「子供の親権を渡さないと離婚しない」と主張したとしても、判決で離婚と親権を勝ち取ることが可能です。
親権者は、子の福祉の観点から子の生活全般を監護する権利、いわゆる監護権も有するのが通常です。この場合、親権者は、子の衣食住等の環境を整え、日常的に子がどのように暮らしていくかという生活面の方針を決定することができます。また、どの学校に通わすか、塾に行かせるかなど教育方針も決定する権利を有します。
これに対し、親権を取れなかった方は、子がどこに住むという住環境に口をはさむこともできませんし、どこの高校や大学に行かせたい、留学させたいと思っても、現実問題として口出しできなくなります。もし、親権を取れる可能性が低い事案であれば、離婚協議書において、しっかり離婚後の子の教育方針や住環境をどうするかなど書面で取り決めておくと良いでしょう。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、親権を取れなかった方がどのように子の監護に関与できるか一緒に最善の策を考えます。ぜひ、離婚後の親権を取れなさそうな状況でも、諦めずに我々弁護士にご相談下さい。
交渉しても取り戻せないことがほとんどですので、以下の手続きを家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所の判断を仰ぎましょう。
法律の手続きを経ないで実力で子供を取り戻す行為は、いわゆる自力救済と言われる行為です。日本の法律では、かかる自力救済を認めていません。別居中に子を監護していない夫婦の一方が、同意を得ずに子供を連れて行くことは、自力救済の禁止に反し、違法になります。実の父母であったとしても、別居後に子供を連れ去ると、未成年略取罪が適用される可能性もあります(刑法224条)。
かかる場合には、直ぐに、家庭裁判所に対し、上記した①~③の仮処分等の申立てをすれば、子を引き渡せという判断が出る可能性が高いです(もっとも、最終的には、子の福祉の観点から判断するので絶対ではないですが)。
幼稚園のお迎えの際に、事情を知らない園を利用して引き取るケースや、学校から帰宅途中の子供を待ち伏せして連れ去るケースについては、弁護士への相談としてよく耳にします。このような場合には、早急な裁判手続きが必要になりますので、我々弁護士にご相談下さい。ウカイ&パートナーズ法律事務所では、子の引き渡し等の仮処分も対応可能です。
「子の引渡しの審判前の保全処分」や「子の引渡し審判」で子を引き渡せという判断が出た場合には、子を引渡せと強制執行することが可能です。この強制執行には、直接強制と間接強制があります。
直接強制は、子供が住んでいる場所や、幼稚園・小学校等に裁判所の執行官と一緒に訪問をして、子の引渡しを受ける方法です。
間接強制は、相手方が子の引渡しに応じない場合に、「子を引き渡さない場合には●●円払え」と金銭の支払い義務を発生させる方法です。
審判で引き渡せと出た場合には、直ぐに相手方に引き渡しを求め、それに応じない場合には、直ぐに強制執行手続きをしましょう。
親権者を夫婦のどちらにするかを判断する際に、不倫をしたことは、原則、影響しません。例え、夫婦のどちらか一方が不倫をしていたとしても、親権者をどちらにするかを判断する際には、別の問題です。
浮気をした側でも親権者になる可能性は十分にあると考えて下さい。
はい。近年の家庭裁判所の傾向としては、単に母親というだけで親権者を母にと一方的に決めつけることはしません。夫婦共働きの世帯が増え、男性であっても子育てのための時短勤務を認める理解ある会社も増えています。また、祖父母がサポートして幼稚園や学童の送り迎えができるなど家族のバックアップがある方もいるでしょう。父親であっても、同居中の子の面倒をどれだけ見てきたか、別居中に子をどれだけ監護できているか、将来の子の監護能力があるか等、事案ごとに具体的にどちらを親権者とすべきか判断をしますので、男性だからと言って親権を諦める必要はありません。
また、母親が子供を虐待していた場合、子供の養育が困難な身体的・精神的障害がある場合などの事情があれば、父親が親権者に相応しいと判断することがあります。
性別 | 年齢 | 職業 | |
---|---|---|---|
依頼者 | 女性 | 20代 | アルバイト |
相手方 | 男性 | 30代 | 自営業 |
子供:2人(私立幼稚園児と3歳児) |
①相談内容
結婚して7年経ち、子供も2人恵まれました。しかし、子供のお受験で、夫婦の意見が真っ向から対立し、夫婦仲は次第に悪くなりました。そして、ある日突然、夫がいきなり子供2人を連れて別居しました。夫は、お受験には口を出すけれども、今まで子供の面倒などほとんど見て来なかったです。子供の食事や着替え、学校の準備などは全て義理の母に任せているようです。直ぐに子供を連れ戻したいし、離婚するとしても親権は絶対に欲しいです。弁護士さん、どうしたらいいですか?
②弁護士の対応
「子の引渡しの審判」を家庭裁判所に申し立てて下さい。そして、この場合には、必ず同時に「審判前の保全処分(子の引渡し仮処分)」も申し立てて下さい。さらに、同時に「子の監護者の指定の審判」も申し立てましょう。これらによって、別居中の夫婦で父母のどちらが子を監護すべきか家庭裁判所の判断を仰ぐことができます。
③離婚問題の解決
同居中の夫婦で、夫婦の一方が子を連れ去り別居した場合、上記した3つの保全処分を必ず直ぐにして下さい。日本の法律では、自力救済は禁止されているので、強引に連れ戻したりすることは、絶対に止めましょう。子の引き渡し等の保全処分は、連れ去られてから直ぐに申し立てをするのであれば、取り戻せる可能性は十分にあります。逆に、今直ぐに保全処分の手続きをしないで、「後で離婚裁判で親権を争えばいい」と考えても手遅れになります。
本件では、連れ去られてから1週間以内に子の引き渡し等の保全処分をしたので、依頼者様のもとに子供らは戻って来ました。そして、その後、離婚調停から離婚裁判に流れ、最後まで親権について争いがありましたが、結果として、子の引き渡し等の保全処分の判断が尊重されて依頼者様が子供らの親権者となることができました。
性別 | 年齢 | 職業 | |
---|---|---|---|
依頼者 | 男性 | 30代 | 会社員 |
相手方 | 女性 | 30代 | 会社員 |
子供:3人 |
①相談内容
妻が子育てを放棄し、毎晩のように飲み歩き、しまいには浮気をしていたようです。呆れた私は、子供を連れて別居をすることとしました。妻とは離婚をして、子供の親権をどうしても欲しいです。弁護士さん、どうしたらいいでしょうか?
②弁護士の対応
依頼者様から聞き取りをした結果、相手方は、浮気はしていたものの全く子育てをしていないということではありませんでした。相手方は毎晩飲み歩いていて、夜に小学校3年生の子供を1人にしていたことは事実であり、証拠もありました。もっとも、依頼者様も大手有名企業に勤務しており、仕事が多忙で夜遅く帰ってくる日々でした。そして、依頼者様の実家は地方であり、周りに子育てを協力してくれる人もいませんでした。弁護士からは、本気で子供の親権を取りたいのであれば、会社と話をして、時短勤務や転勤のない労務環境にしてもらうべきだとアドバイスしました。
③離婚問題の解決
依頼者様の勤務する会社は、子育てをする男性に対しても理解のある会社であり、また、子育てをする男性のための時短勤務の制度を整備している会社でした。依頼者様は、弁護士からのアドバイスに従い、時短勤務制度の申し込みをし、学童の終わる18時には子供を迎えに行き、夕食を自分で作り、夜も一緒に寝るという環境を整えました。土日の休日出勤も可能な限りなくし、どうしても仕事で遅くなったり土日に出勤をしなければいけない日には、地方から母に来てもらうことにしました。昔と違い今の裁判所では、男性だから親権が取れないということはありません。子の福祉の観点から父と母のどちらがより子を監護できるかという視点に基づいて判断しています。今回は無事、父親である依頼者様に親権が認められました。