DVによる慰謝料請求を受けた場合でも、減額できる場合はあります。
①DVを裏付ける証拠がない場合
この場合には、そもそもDV自体を否定できる可能性があります。相手方の出してきた証拠の中に、DV被害の証拠写真があるか、医師の診断書や警察への相談履歴や被害届が出されているか、暴行の録音や動画があるかなどから判断します。
②DVの被害者側にも過失があった場合
「DVか単なる夫婦喧嘩か?」という論点は離婚裁判上でよく争いになります。一方が暴力を振るっただけではなく、被害者と言っている側も暴力を振るっているケースはよくあります。
③過大請求である場合
DVを主張する相手方からの請求が過大な場合があります。慰謝料の相場を不当に逸脱していないか確認する必要があるでしょう。
④自分に資産や収入が少なく支払い能力がない場合
DVによって相手方から高額な慰謝料を請求されても、加害者に資産がなく、また、収入も少ない場合には支払い困難でしょう。和解するにしても、現実的に支払える金額でないと、途中で支払いが滞ることもあります。支払える範囲での請求に減額してもらう交渉が必要でしょう。
⑤時効にかかっている場合
請求自体が時効にかかっていないか確認して下さい。DVを原因とした離婚の慰謝料請求の場合、離婚してから3年で時効にかかり、DVによって怪我をした場合の損害賠償請求の場合、怪我をした時から5年で時効にかかります。
「DVか単なる夫婦喧嘩か?」という論点は、離婚調停や離婚訴訟でよく争われます。夫婦喧嘩は、意見や価値観の相違から、対等な関係の夫婦がお互いに意見をぶつけるものであり、「対等な関係」が前提です。これに対し、DVは、力の強い方が一方的に力の弱い相手方を支配する行為であり、両当事者間にパワーバランスの差があるのを前提としております。このように、「対等な関係」かどうかという観点から、DVと夫婦喧嘩を区別します。
夫婦喧嘩をしてお互いが暴力を振るった場合には、通常の場合、夫婦のどちらか一方だけが悪いわけではありません。夫婦の一方のみが傷害を負った場合などを除き、双方が暴行をしている場合には、双方の請求を相殺することで慰謝料なしとなることが多いです。
最近、よく耳にする相談として、虚偽DVやDV冤罪というご相談があります。 離婚調停や離婚裁判で優位に戦うために、DVなど実在しないにもかかわらず架空のDV被害をでっち上げ、DVを主張する事案です。DVの立証責任は被害を主張する相手方にありますが、あたかもDVの被害者であるかのごとく警察やDVシェルター等の相談機関に相談し、相談実績をつくることで真実でないのに客観的な事実であるかのように取り繕ってくることがあります。
相手方が架空のDVを主張してきた場合は、慌てず冷静にDVは行っていないことを主張しましょう。相手方がDVの証拠を提示してきた場合も、その証拠が事実と矛盾している点を調査し、DVの事実がなかったことを裏付ける証拠を集めておくことが必要です。例えば、相手方がDVをされたとする日時のアリバイや、日常の相手方とのLINEのやりとりで立証する場合もあります。
虚偽DV、でっち上げDV、冤罪DVの事案では、相手方が主張した当初から理論武装して反論をする必要があります。早くからの弁護士への相談をお勧めします。
相手方が浮気をしている場合には、有責配偶者となるため原則、離婚請求が認められません。そのために、架空のDVをでっち上げて離婚原因を作り出そうとする事案も最近、多いようです。DVをでっち上げ、自身に有利になるように離婚判決を取り、再婚を考えているのでしょう。これに対しては、冷静にDVを否定するとともに、離婚裁判の一番の争点が相手方の不貞行為であるとしっかり主張立証して訴訟を遂行していく必要があるでしょう。
刑事告訴できる場合もあります。 相手方が虚偽のDVをねつ造し刑事告訴した場合であり、それが虚偽の刑事告訴と立証できる場合には、虚偽告訴等罪(刑法172条)で刑事告訴できる可能性があります。また、虚偽のDVを他人に言いふらした場合には、名誉棄損罪(刑法230条1項)で刑事告訴できる可能性があります。
性別 | 年齢 | 職業 | |
---|---|---|---|
依頼者 | 男性 | 30代 | 会社員 |
相手方 | 女性 | 30代 | 会社員 |
子供:大学生1人 |
①相談内容
妻とは大学の在学中に授かり婚で結婚しました。お互いに主張が激しいことから、結婚後も衝突することは多くありました。夫婦喧嘩のたびにお互いに罵倒し合ったり、物を投げたりすることもよくあり、かなり激しい夫婦喧嘩だと思います。夫婦喧嘩の中で離婚の話しがでることもあり、妻から離婚届を実際に手渡されたこともありました。そのような中で妻との離婚を考えるようになりましたが、子供が大学生ということもあり、子供が成人してから離婚もタイミングをみてしようと考えていました。しかし、先日の夫婦喧嘩ではお互いに手を出す出来事に発展してしまい、妻の手を振り払うと妻がよろけて怪我をしてしまいました。怪我をさせてしまったのは事実ですが、妻からの暴力があったのも事実です。そのような状況では夫婦で離婚協議は難しいと思っています。どのようにすればいいでしょうか?
②弁護士の対応
夫婦で協議が難しい場合には、弁護士を代理人として立てて話し合うことが可能です。本事案では、相談者様と妻が接触することはお互いにとって危険であると判断し、弁護士から妻に協議離婚申込書を送付する際に、相談者様に接触しないように伝えました。妻は協議離婚を受け入れたものの離婚はしたくなく、妻の要求を受け入れるのであれば離婚に応じるとのことでした。妻は弁護士と書面でのやり取りをしていましたが、妻からの要求があまり明確ではなく、どのようなものか分かりづらかったため、請求内容を確定するために弁護士から口頭での交渉を打診しました。口頭での交渉が進むにつれ、妻の要求も明確になってきましたが、相場を上回る養育費の要求など過剰な要求もありました。そこで、適切な範囲で妻の要求を受け入れる意思を示しつつ、過剰な要求である場合には離婚調停に以降せざるを得ないことを伝え、養育費算定表を基準とした金額で離婚の成立となるよう妻の説得を続けました。その結果、養育費については基準に従って算出され、財産分与については基準よりも少し妻に有利な形で算出となり、離婚が成立となりました。
③離婚問題の解決
財産分与について、夫婦は、共通口座に毎月決まった金額を入金しそこから生活費をやりくりしており、自己の給料については個々で管理していました。法的には、双方の財産は名義に関係なくすべての財産が財産分与の対象となりますが、共通口座以外の口座はそれぞれの物として双方が認識していたため、個々で管理していた口座は財産分与の対象とはしませんでした。また、マンションを購入していたこともありローンが残っていましたが、相談者様がローンごとマンションを引き取る形で合意しました。一般的には双方の財産を開示をしたうえで財産分与をしますが、本事案のように双方の財産開示をしないで財産分与が成立することも多々あります。
性別 | 年齢 | 職業 | |
---|---|---|---|
依頼者 | 男性 | 30代 | 会社員 |
相手方 | 女性 | 20代 | 会社員 |
子供:なし |
①相談内容
妻と結婚して3年になります。結婚してから妻は機嫌が悪いと私に暴言を吐き、上手くいかないことは私のせいにして過度な謝罪を求めたりと、モラルハラスメントと思える行動をとっていました。妻との関係をこれ以上荒立てることがないよう、妻に気を遣って生活していましたが、会社から転勤を命じられたタイミングで妻から離婚をしたいとの話しがありました。急な出来事であったため、考える時間が欲しいと伝えると、妻は実家に帰ってしまい、すぐに妻から離婚調停が申し立てられました。そのような中で妻は私から日常的に暴力や暴言があったとして手書きの日記などを証拠に、多額の慰謝料を請求してきました。離婚することは合意しますが、妻の主張には全く同意できません。どうしたらいいんでしょうか?
②弁護士の対応
同居中のLINEの内容や、スマートフォンに残っていた留守番電話などから、相談者様が妻に対して暴言・暴力を振るう関係ではなく、むしろ妻から暴言・暴力の事実があったことを立証しました。妻からの慰謝料の請求は否定され、妻名義にされていた預金も財産分与の対象と認められ半分程度得ることができました。
③離婚問題の解決
妻はでっちあげDVと思われる主張や、過剰な慰謝料請求をしてきましたが、1つひとつ証拠を集めて整理し、主張立証することで、妻側の慰謝料の請求を棄却するだけでなく正当に財産分与を行なうことができました。家庭内の暴言・暴力は、記録に残そうとしないと証拠が残らないことも多いですが、本事案では相談者様側に夫婦の関係性を示すやり取りが残っていたため、財産分与の相場どおりの金額で離婚を成立することができました。