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ご相談事例
双方が浮気をしている場合、離婚裁判はどうなりますか?

2022/01/11更新

女性・ 30歳代

・子供有り

・結婚歴6~10年
私と主人はどちらも浮気をしてしまい、一度はお互いやり直そうと頑張りましたがやっぱり許すことができず、私は、離婚をしたいと考えております。浮気の証拠は、どちらも持っているため、浮気について争うつもりは双方にありません。もっとも、私たちには小学生のこどもが3人います。夫は、子供の環境を変えたくないと言い、親権を持てないのであれば離婚しないと言っております。 このように、親権でどうしても折り合いが付きません。子どもの親権まで持っていかれるのがどうしても嫌ですが、どうしても離婚したいので、私の方から離婚裁判をするにいたりました。 今回のように、私にも夫にも浮気がある場合、離婚裁判で離婚は認められるのでしょうか。 弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 北川 英佑
本件の場合、旦那様が離婚を拒んでいるということなので、相談者様が離婚するためには民法第770条が定める離婚の訴え(訴訟)によって離婚請求を認めてもらう必要があります。まず、離婚請求を認めてもらうために主張する離婚原因(法定離婚事由)としてまず配偶者の不貞行為(民法第770条1項1号)があったことが考えられます。しかし、本件のように双方とも不貞行為を行っていた場合で、双方とも少なくとも不貞行為の有無については争う意思がないことを考えるとこの原因に拠ることは適切ではないといえます。そこで、双方の不貞行為その他の事情により夫婦関係が破綻していることをもとに「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があったこと」(同条1項5号)を主張することが考えられます。相談者様による離婚請求は有責配偶者からの離婚請求ということになります。有責配偶者からの離婚請求については裁判所は古くは認めていませんでしたが、1950年代後半からは夫婦関係が破綻していると認められる場合にほかの事情を考慮しつつ夫婦関係の破綻が「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたるとして有責配偶者からの離婚請求を認める判決が出ています。そして1987年9月2日の最高裁判決は有責配偶者からの離婚請求について①長期間別居状態が継続していること②未成熟の子がいないこと③離婚の実現が著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないこと(たとえば離婚により配偶者が精神的社会的経済的に極めて過酷な状況に置かれるなど)という3つの要素を示しました。これが現在に至るまで、有責配偶者からの離婚請求の認否の基準となっています。この中でまず「長期間の別居」がどの程度の期間をいうかがしばしば問題とされてきましたが、昭和62年の判決後の判例の流れの中では短縮されていく傾向があり、未成熟の子が存在しない例では7年半で離婚請求を認めた判例もあります(最高裁判決1990年11月8日)。また「未成熟の子」の年齢や状況については判例からおおむね18歳未満あるいは高校在学中であると考えられます。なお、夫婦関係が破綻した後に一方が不貞行為を行った場合については不貞行為を行った側は「有責配偶者」とはみなされないとする判例もあります。双方が不貞行為を行っている場合は、双方の不貞行為の存在が「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するか否かについて原告(離婚を請求する側)と被告との間の有責性の程度を比較して、請求者のほうが有責性が小さい場合や同程度である場合は婚姻関係の破綻が認められやすい傾向にあります。請求者のほうが有責性が大きい場合は先の1987年の判決の3要素の判断がより厳しく行われることになりますが、概して未成熟の子が存在しない場合で有責性の小さい被告に一定の収入がある場合などは認められる可能性があります。本件でも、相談者様と旦那様のどちらが先に不貞行為を行ったかなど、夫婦間の有責性の程度が比較されることになると考えられます。また、小学生のお子さんが3人いるということで未成熟の子が複数存在するという状況や長期間別居している状況ではないことなどを考慮すると、夫婦関係の破綻だけをもって離婚請求が認められるかどうかは微妙かと思われます。親権について旦那様と折り合いがつくか否かが重要になるでしょう。単純に有責性の比較だけが問題になる事案ではないので、弁護士に相談することをお勧めします。

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