財産分与とは、離婚の際に、結婚後に夫婦が築いてきた財産を分けることを言います。預金・不動産、車などの動産や年金や株式などが財産分与の対象になります。
A:財産分与には、以下の3つの種類があります。
(1) 清算的財産分与(婚姻中の共有財産の清算)
夫婦共同生活中に築いた共有財産の清算を目的とするもの。世間一般に言われている財産分与は、これを指します。
(2) 扶養的財産分与(離婚後の扶養を目的としたもの。)
○ 経済的に弱い立場にある配偶者が自立をするまでの援助として支給されるものです。
○ 離婚によって生活ができなくなる夫婦の一方の暮らしを維持するために、認められることがある。
○ 実務上は、清算的財産分与によっては十分な財産を得られない場合にのみ請求できるとされております。
○ 離婚の相手方に財産がないからと言って、すぐに諦めることをせず、扶養的財産分与の請求をすることも考えましょう。
○ 扶養的財産分与の主張立証は、単純な主張ではないため、離婚のプロである弁護士に任せることをお勧めします。
(3) 慰謝料的財産分与(離婚による慰謝料)
○ 最高裁判所は財産分与に離婚による慰謝料を含めることができるとしています。
○ 財産分与に慰謝料が含まれて、精神的な損害に対して十分な金銭が支払われる場合には、配偶者の不貞行為等を理由に、別途、慰謝料請求はできません。
○ もっとも、慰謝料的財産分与を含めた財産分与がなされたものの、あまりに少額であり精神的苦痛が十分に慰謝されていないと言える場合には、不法行為に基づく損害賠償請求として別途、慰謝料の請求が可能です。
原則、2分の1で分けます。
○ 実務では、通常の夫婦の場合、双方の寄与の割合を2分の1とするいわゆる2分の1ルールが採用されております。1996年2月26日法制審議会決定もこの考え方によっています。
○ 夫婦共有財産は、夫婦が協力して築いたものです。仮に、専業主婦であったとしても、その清算(分与)については、原則として1/2ずつということになります。
○ ただし、一方当事者が、特殊な才能によって高額な所得を得ているような場合には、例外的に2分の1以外で分配します。
裁判所は、「財産の取得や維持に対する夫婦双方の貢献度合い」「過去の生活費の不払い分の清算」「離婚後の当面の生活費援助」「離婚につき責任ある配偶者に対する慰謝料負担」などの諸事情を考慮して、分与の額を決定することができるので、実際は1/2ずつにならない場合もあります。
はい。
○ 専業主婦であっても、夫は、妻に家庭を安心して任せたおかげで財産を築くことができたと考え、原則通り、2分の1で分けるのが、実務の主流です。
○ 夫婦共同財産に資産と債務がある場合には、プラスの財産からマイナスの財産(借金)を引いた残額をベースに計算することになります。
○ 財産分与の請求は、通常、離婚調停・離婚訴訟の申立てと同時に申立てられます。しかし、離婚が決まらないと財産分与はできないため、調停がまとまらないときは、離婚訴訟の判決によって決まります。
○ 離婚後に財産分与の調停を申立てる場合には、調停がまとまらないときでも、自動的に家事審判官(裁判官)が一切の事情を考慮して、分与額を決定(審判)します。
(1) 財産分与の対象となるもの
<プラスの財産>
1 預金
2 現金
3 不動産
4 有価証券(株式)
5 動産(車、絵画)
6 保険の解約返戻金
7 退職金(ただし、婚姻後別居までの期間に相当する部分だけが分割対象となる)
※あくまで、婚姻後に取得した財産に限られます。
<マイナスの財産>
結婚後、夫婦の生活費としての借金(住宅ローン、消費者金融からの借入)
(2) 財産分与の対象とならないもの
1 結婚前にそれぞれが保有していた財産
2 結婚中に相続した財産
○ 通常、時価で算定します。不動産鑑定士に鑑定を頼むと費用が相当かかるので、不動産屋数社に査定をお願いするといいでしょう。実務では、双方が出した平均値で算出することが多いです。
○ 会社と夫は別人格であり、原則、会社の資産は財産分与の対象になりません。しかし、会社の株式は、財産なので、株式自体は財産分与の対象になります。その場合には、株式の半分を請求するか、会社の資産を査定し代償金として金銭請求をする手段が考えられます。
○ この場合、個人で戦うのは困難なので、離婚のプロである弁護士に任せることをお勧めします。
はい、なります。
○ 夫婦の一方が加入している保険(生命保険、学資保険)も、財産分与の対象になります。
○ まずは、保険が積立型か掛捨て型か確認しましょう。
○ 保険は、解約する必要こそありませんが、保険会社に解約返戻金の見積もりを出してもらう必要があります。
○ 解約返戻金の評価時は、別居時です。
財産分与の対象になる場合とならない場合があります。
○ 退職する予定が何年も先である場合には、退職金を財産分与の対象としないことがほとんどです。 もっとも、 直近で退職する予定がある場合や、定年退職が間近に迫っている場合には、退職金の支給が確実であると言えるため、退職金も財産分与の対象となることが多いです。また、公務員の場合には、民間企業のように倒産する可能性がなく退職金の支給可能性が高いため、財産分与の対象となることがほとんどです。
○ 退職金が財産分与の対象となるとしても、退職金の全額が対象になるわけではありません。在職期間に対し、婚姻期間の方が短い場合には、同居中の婚姻期間相当部分のみが対象となります。つまり、婚姻前や別居後の期間は財産分与の対象外となるのです。
○ この場合、個人で戦うのは困難なので、離婚のプロである弁護士に任せることをお勧めします。
別居時を基準とします。
○ 清算的財産分与では、夫婦の協力によって得られた財産であることが前提なので、特段の事情がない限り、別居時になります。
○ なお、扶養的財産分与の場合には、財産の評価時期は離婚の成立時とするのが妥当だとされています。
○ それぞれが結婚前から持っていたり相続したりした財産(特有財産)は財産分与の対象にはなりません。このようなケースでは、通常、夫婦の一方が親から贈与を受けたものと言えるので、頭金相当分は特有財産にあたり、財産分与の対象とはなりません。
いいえ、できる場合があります。
○ 上記したように、財産分与は、通常、夫婦共有の財産を2分の1づつ分けるのが実務の習わしです(清算的財産分与)。しかし、扶養を受けていた妻から夫に対して、扶養的財産分与請求が認められる場合もあります。
○ 「離婚後の生計を維持するに足りる程度」という基準で考えることが多いです。
○ 法律上も判例上もいつまでどれくらいという明確な基準はありません。
○ 判例の中では、「相手方が再婚するまで」、「相手方が経済的に自立するまで」、「生活保護を受けられるまで」などあります。
○ 家裁判事(裁判官)の講演では、「再就職をするまでの期間として、2年程度の生活費が目安」とする意見もありました。
はい、できます。
○ 財産分与は、離婚後でも単独で請求することができます。ただし、離婚後2年が経過すると請求できません。できれば、離婚前に清算しましょう。
○ 財産分与の額が、夫婦が協力して得た婚姻中の財産の額や社会的地位からして、夫婦共有財産の清算として相当な額であれば、贈与税は一切かかりません。
○ ただし、不動産を財産分与した場合で利益が出た場合には、所得税法にいう資産の譲渡に当たるとして、譲渡所得税がかかる場合があります。
○ 株式、ゴルフの会員権などを譲渡した場合にも同様に課税される場合があります。
○ なお、ウカイ&パートナーズ法律事務所は、グループに会計士・税理士がいるため、お客様にトータルなリーガルサービスを提供できます。