養育費とは、一言で言うと離婚後の子供のための生活費です。婚姻中に受け取るのが婚姻費用で、離婚後に受け取るのが養育費と思って下さい。
○ 養育費とは、子供が社会人として自ら生活できるようになるまでに必要な費用をいい、衣食住に必要なお金、教育費、医療費など一切が含まれます。
○ 離婚しても、子供の養育費を負担する義務があります。
○ 養育費の支払いは、子供を養育している親が、養育していない親に請求できるものです。親権がどちらにあるか、どちらの姓を名乗っているかは関係ありません。
養育費は、①親同士で協議して決める方法と、②家庭裁判所に養育費請求の調停・審判を申し立てる方法があります。この申立ては、離婚調停・訴訟と併合して申し立てできます。また、離婚後であっても子が成人する前であれば、申し立て可能です。
(図:準備中)
○ 夫婦間の話し合いで養育費の金額を決めることもできます。この場合には、養育費の支払協議書を作成すべきです。
○ 以下の事項につき、きちんと話合いがされたか確認しましょう。
○ 口約束しただけ、夫婦間でサインしただけでは強制執行ができません。できれば、公正証書を作成することをお勧めします。
○ 厚生労働省の「全国母子世帯等調査」(2006 年度)によれば、離婚の際に養育費の取決めをしている母子家庭は 39%であり、養育費の支払いを「現在も受けている」という家庭はその約半分の 19%にすぎないようです。
○ 「公正証書を作成していれば・・・」と後で後悔しないためにも、法律家によるきちんとしたアドバイスを求めることをお勧めします。
○ 相手方が養育費の支払いに応じない場合には、裁判所を通した調停の申立をすることができます。調停で話し会っても合意ができなかった場合には、家庭裁判所に審判を求めることになります。養育費について,両親の話合いがまとまらない場合には,家庭裁判所に調停の申立てをして,養育費の額や具体的な支払方法等についての取り決めを求めることができます。
○ 養育費を求める場合、訴訟ではなく調停を申し立てる必要があります。
○ 調停で合意すれば、判決と同一の効力が得られます。そして、合意後に養育費の支払いをしない場合には、強制執行が可能です。
以下の通りです。
以下の通りです。
○ 調停手続きは、家事審判官(裁判官)・調停委員らによって、なるべく双方の意見を調整しながら夫婦の話し合いによって合意に達するよう進められます。双方が養育費の合意に達すれば調停が成立しますが、折り合いがつかず、調停期日を数回開いても、相手方が出頭しないようなときには調停は不成立となり終了します。
○ 調停では、2名の調停委員を介して話し合いをするため、直接相手方と話し会う必要がありません。相手方と顔を合わせずに意見を言うことができるので、「相手方に言い負かされてしまう」、「相手方と顔を合わせたくない」と考えている方は、調停にできるだけ早くもっていくのが良いでしょう。
○ なお、養育費の調停で代理できるのは、資格者の中で弁護士だけです。司法書士や行政書士など他の資格者では代理できません。
○ 仕事で出頭することが難しい方やDVなどで相手方と顔を合わせたくない方は、弁護士に代わりに出てもらうことが可能です。もっとも、具体的な事情をできるだけ伝えた方がいいので、本人も参加することが望ましいです。
○ 当事務所では、DV等の事案において、依頼者が調停で相手方に会うことを強く拒絶している場合には、あらかじめ裁判所に話を通して待合室を別の階にしたり、出頭時間をずらすなど、最大限の配慮を図るようにしております。
○ 調停がまとまらず,不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され,家事審判官(裁判官)が,当事者間の一切の事情を考慮して,養育費を定める審判をすることになります。
○ 実務では、婚姻費用の算定と同様に、平成15年「東京・大阪養育費等研究会」がまとめた算定表をベースにして決定されることがほとんどです。
○ この基準は、裁判官達が作成した①夫と妻の税込年収、②子供の人数、③子供の年齢に応じて、2万円程度の幅で養育費の金額が決定されています。
○ 厚生労働省の2006年度「全国母子世帯等調査」によると、養育費の支払い平均額は、4.2万円とされております。しかし、上述のように、養育費の額は、お互いの収入等により決まるので、相場というものは考えないでいいでしょう。
○ この算定表は、東京家庭裁判所のHPでダウンロードできます。
○ ダウンロードはこちらから→算定表(PDF:112KB)
○ 表の見方のポイントですが、以下の通りです。
○ 具体的な見方は、弁護士にご相談下さい。
・当事者の合意がある場合 | → | その合意により定めた日からです。 |
・当事者の合意がない場合 | → | 当事者で合意ができず裁判(調停・審判)に流れた場合の支払い時期は、申立をしたときからと実務で定着しております。 |
○ 過去の養育費の請求は、例外的に認めた審判例もありますが(宮崎家審平成4.9.1)、原則として認められないと思って下さい。
○ このように、離婚後に養育費の支払いがなされていない場合、過去の分を裁判(調停や審判)で取り戻すことは実務上困難です。生活費に困っている場合には、いち早く養育費請求の調停を申し立てるべきです。養育費請求の調停を代理できるのは資格者の中で弁護士だけです。司法書士や行政書士など他の資格者では代理できませんので、弁護士に相談することをお勧めします。
養育費を依頼する場合の費用は、弁護士費用110番へ↓
○ 養育費は、審判・判決において、20歳までの支払とするのが通常です。
○ 当事者間や調停においては、18歳、20歳、22歳のいずれかでまとまるケースがほとんどです。「高校卒業まで」、「成人するまで」、「大学卒業まで」など、夫婦間でよく話し合う必要があるでしょう。
○ なお、親の学歴や経済的・教育水準等より相当な場合に、大学卒業時までの支払義務を認めた判例もあります。調停員も、両親が大卒で高学歴の場合には、「大学まで進学するでしょうから」と卒業時までの支払を勧めることがありますので、あくまで具体的事情により変わると考えて下さい。
はい、できます。
○ 離婚後に養育費の請求をすることも可能です。
○ もっとも、上述したように、離婚後の養育費の請求は、裁判上では調停の申立時以降の分しかもらえません。生活に困窮している場合には、早く弁護士に相談しましょう。
はい。
○ 公正証書や調停で一度決めた場合であっても、家庭裁判所に養育費変更の調停を申し立てることで、増減が認められる場合があります。もっとも、合意後に事情変更が生じている必要があります。状況に変化がなければ、認められない傾向にあります。
○ 減額理由としては、以下の具体例があります。
○ 増額理由としては、以下の具体例があります。
○ 具体的な事案により変わって来ますので、詳しくは、弁護士にご相談下さい。
はい、できます。
○ 判例上、養育費を請求しないという合意も、子の福祉を害する特段の事情がなければ有効とされております(大阪家庭審判 平成元年9.21)。
判例上、養育費を請求しないという合意があっても、合意後に事情変更が生じた場合には、養育費を請求することができるとされております(大阪家庭審判 平成元年9.21)。
はい、可能です。
○ 養育費は、毎月分割で払うのが一般的です。もちろん、「相手方の将来の収入が不安である」、「相手方が支払ってくれるか信頼できない」という意見もあります。まとまった金額を一括で支払うこととする合意も可能です。ただし、この場合には、110万円以上受け取る場合に、贈与税が課税されます。毎月の養育費の受け取りであれば、非課税ですので、分割払いの方がいいでしょう。
○ もっとも、財産分与や慰謝料名目であれば、非課税となります。
○ なお、ウカイ&パートナーズ法律事務所は、グループに会計士・税理士がいるため、お客様にトータルなリーガルサービスを提供できます。
○ 調停においては、相手方に給与明細・源泉徴収票の開示を求めることになります。
○ 収入が判明しない場合には、賃金センサスの平均賃金を基準に請求します。
○ 裁判実務で相手方の収入が判明しない場合に、全国の平均賃金として賃金センサスを利用することがよくあります。
○ なお、賃金センサスとは、厚生労働省が都道府県労働局、労働基準監督署を通して行っている職種別・年齢別の賃金に関する統計である賃金構造基本統計調査の情報を集めたものです。
○ 賃金構造基本統計調査は、主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数及び経験年数別に明らかにすることを目的として、毎年6月(一部は前年1年間)の状況を調査している調査です(厚生労働省HPより)。
いいえ。
○ 定職に就いた経験があり、就労可能、つまり、働けるのに働かない場合には、潜在的稼働能力があるとみなし、本来得られるべき収入を直前の収入を参考にしたり賃金センサス等の統計により算出して、その金額の収入があったものとみなすことが多いです。
○ もっとも、すぐに定職に就けそうもない場合には、パートタイム労働者の平均賃金を基準とする場合もあります。
いいえ。
原則、「0」になります。
○ しかし、潜在的稼働能力がある(働こうと思えば働ける)場合には、パートアルバイト労働者の平均賃金を基準とする場合もあります。調停や審判では、「100-200万円程度の稼働能力がある」と評価されることが多いです。
○ 子供が乳児である場合や子供が病気の場合、妻自身が病気で働けない場合には、潜在的稼働能力がないと判断されることもあります。
いいえ。
○ 実家からの援助は、収入に加算されません。
○ もっとも、働けるのに働いていない場合には、収入があるものとみなされる場合があります。
はい、考慮される場合があります。
○ 算定表の枠を越える特別の事情があると言えるでしょう。この場合、治療費を双方の収入に応じて案分することが多いです。
いいえ、減額となります。
○ 再婚相手とその子を養っているのであれば、その生活費を控除した上で養育費を算定します。両方の子供を平等に扶養すべきという配慮からです。
はい。
○ 原則として、不倫については、慰謝料として精算されるべきであり、子の養育のための費用とは性質が異なります。
強制執行をすることになります。
○ 強制執行の具体例としては、以下の財産を差し押さえる手段があります。
○ 強制執行は、法律的知識や実務知識が必要であり、手続きも複雑です。弁護士にご相談することをお勧めします。ウカイ&パートナーズ法律事務所では、強制執行手続きの代行も承っております。
はい。
○ 養育費等の履行確保の場合、差押禁止の範囲は給与の「2分の1」となります(民事執行法152条3項)。したがって、夫の給与の2分の1を押さえることが可能です。
○ なお、差押えできるのは、額面ではなく、手取りの2分の1です。
いいえ。
○ 婚姻費用・養育費に関しては、例え破産しても借金は免責されず、支払い義務が残ります(破産法253条)。したがって、破産後でも、夫に支払いを請求できます。
○ なお、個人再生の場合も同様に減額されず、婚姻費用・養育費を満額請求できます(民事再生法229条3項、破産法253条)