○ 協議離婚をするには、当事者の合意が必要です。
○ 離婚届に双方が署名・捺印をして市区町村役場に提出すれば成立します。
○ 子供がいる場合、親権者を必ず決めなければなりません。
夫婦間の話し合いで離婚の合意ができれば、離婚届を役所に提出すれば離婚自体は成立します。もっとも、離婚届を提出するだけでお互いの権利関係が決まるわけではありません。
以下の事項につき、きちんと話合いがされたか確認しましょう。
(1) 養育費 | ・・・ |
(2) 財産分与 | ・・・ |
(3) 慰謝料 | ・・・ |
(4) 親権 | ・・・ |
(5) 子供の面会交流権 | ・・・ |
(6) 年金分割 | ・・・ |
○ 上記事項で話合いが付いた場合には、離婚協議書の作成です。口約束や念書だけでは強制執行できないので、できれば、公正証書を作成することをお勧めします。
○ 例えば、厚生労働省の2006年度「全国母子世帯等調査」によると、養育費の支払いを受けているという家庭は19%にすぎないようです。
○ 「公正証書を作成していれば・・・」と後で後悔しないためにも、法律家によるきちんとしたアドバイスを求めることをお勧めします。
○ 相手方が離婚に応じない場合には、裁判所を通した離婚調停の申立をすることになります。調停で話し会っても離婚ができない場合には、家庭裁判所に裁判を起こし、判決による強制的な離婚を求めることになります。
○ 離婚をする場合、訴訟提起の前に必ず調停を申し立てる必要があります(家事審判法18条:調停前置主義)。つまり、いきなり訴訟をすることはできません。
○ もっとも、相手方が生死不明、行方不明、心神喪失の状態にある場合には、調停を経ずに、直接訴えを提起できる場合があります。
○ 調停手続きは、家事審判官(裁判官)・調停委員らによって、双方の意見を交互に聞きながら夫婦の話し合いによって夫婦間が円満に婚姻関係を解消(離婚)する調整をします。
○ 双方が離婚の合意に達すれば「調停離婚」が成立し、調停期日を数回開いても、合意に至らなかったときや、相手方不出頭のときには調停は不成立となり終了します。
○ 調停では、2名の調停委員を介して話し合いをするため、直接相手方と話し会う必要がありません。相手方と顔を合わせずに意見を言うことができるので、「相手方に言い負かされてしまう」、「相手方と顔を合わせたくない」と考えている方は、調停をする方がいいでしょう。
○ 1回の調停期日は、通常2時間用意されておりますが、場合によっては、3-4時間拘束されるときもあります。
○ なお、離婚調停で代理できるのは、資格者の中で弁護士だけです。司法書士や行政書士など他の資格者では代理できません。
○ 仕事で出頭することが難しい方やDVなどで相手方と顔を合わせたくない方は、弁護士に代わりに出てもらうことが可能です。もっとも、具体的な事情をできるだけ伝えた方がいいので、本人も参加することが望ましいでしょう。
○ 当事務所では、DV等の事案において、依頼者が調停で相手方に会うことを強く拒絶している場合には、あらかじめ裁判所に話を通して待合室を別の階にしたり、出頭時間をずらすなど、最大限の配慮を図るようにしております。
○ 調停委員会は、法曹関係者(主に弁護士)と、民間の良識ある市民から選ばれた人の2名で構成されます。
○ 事案によっては、家庭裁判所調査官が関与するケースもあります。
○ 調停で話し合いが付かなかった場合には、「調停不成立」となり、さらに離婚を請求する場合には、家庭裁判所に訴訟提起をする必要があります。
○ 裁判では、法律で定められた「離婚原因」(民法770条1項1~5号)がなければ離婚が認められません。
○ 裁判は調停のように話し合いの場ではないため、離婚原因に結びつく証拠を提出し、自己の主張を裏付ける書面や相手方の主張に対する反論の書面を作成していく必要があります。また、証人尋問・本人尋問も必要です。法律や訴訟運営につき知識・経験の乏しい方では困難なので、弁護士に依頼して訴訟を任せる方が良いでしょう。
はい、できます。
○ 裁判所に離婚を求める場合、同時に財産分与、慰謝料請求、養育費、親権者の指定等に関する請求を求めることもできます。
○ 夫婦が合意して離婚する場合は、自由に離婚することができます。しかし、夫婦の一方が離婚に応じない場合には、下記の離婚原因が必要である旨、法律上定められております。すなわち、相手の同意が無くても、以下の場合に当てはまれば離婚が認められる可能性があるのです。
(1) 不貞行為(浮気)がある場合(民法770条1項1号)
(2) 悪意の遺棄をされた場合(民法770条1項2号)
(3) 相手の生死が3年以上不明の場合(民法770条1項3号)
(4) 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合(民法770条1項4号)
(5) その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある場合(民法770条1項5号)
それでは、具体的に見ていきましょう! ↓
○ 不貞行為とは、俗に言う、浮気・不倫のことです。
○ 裁判例では、「配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と肉体関係まで至った場合を不貞行為としており、デート等をするだけでは不貞行為にあたりません。
~不倫110番で詳しく記載しました。クリックしてご覧下さい。~
○ 悪意の遺棄とは、配偶者が正当な理由なく同居義務・協力義務・扶助義務等を履行しないことを言います。
○ ただし、相手方が同居に応じないというだけで「悪意の遺棄」にあたるとすることは、実務上困難です。
○ 判例では、半身不随の身体障害者の妻を自宅に置き去りにし、長期間別居を続け、その間、妻に生活費を渡さなかった夫の行為を「悪意の遺棄」にあたるとしたものがあります(浦和地裁昭60.11.29)。
○ 配偶者の生死が3年以上不明であれば、夫婦関係は既に破綻しているとして、配偶者に対し離婚を請求する権利を認めています。
○ 単に行方不明では足りず、生存の証明も死亡の証明もできない場合に限ります。
○ ただし、裁判を起こす必要があります。3年以上生死不明というだけで離婚届を出すことはできません。
○ 配偶者が強度の精神病に罹り、なおかつ回復の見込みがない場合には、離婚原因になる可能性があります。
○ ただし、病者には責任がないため、実務上は精神病を理由に離婚を認めることはありません。
最高裁判例も、民法770条1項4号に該当する場合であっても、「単に夫婦の一方が不治の精神病にかかった一事をもってただちに離婚の請求を理由有りとするものと解すべきでなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込みのついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない」とする(最判昭33.7.25)。
○ 婚姻関係が破綻して回復の見込みがない場合と言える事由があるかという意味です。
○ 夫婦関係が破綻してしまい、双方に婚姻継続の意思がなく(主観的側面)、婚姻共同生活を回復する見込みがない(客観的側面)か、個々の具体的な事情から裁判所が判断します。
具体例として挙げますと、以下のものがあります。
○ 特に、別居の有無と別居期間の長さは、重視されます。
○ 1つでは、決定的な離婚事由とならなくても、重複した離婚事由があることにより「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして、離婚が認められる場合もあります。
いいえ。
○ 裁判においては、性格の不一致のみで離婚が認められることはありません。結婚は、元々赤の他人であった者が共同生活をするものなので、ある程度生活習慣や性格にずれがあるのは当然という判断があります。
○ ただし、性格の不一致をきっかけとして、婚姻関係が回復不可能なまでに破綻すれば婚姻を継続しがたいとして離婚が認められる可能性があります。つまり、性格の不一致から別居になった、性格の不一致からケンカが絶えなくなった、性格の不一致から夫婦間に全く会話がなくなったなどの具体的な事情が必要なのです。
○ 判例の中には、性格の不一致が婚姻破綻の原因であるとして離婚請求を認容したものもあります。
ex.「夫婦のいさかい原因は、夫が几帳面で清潔好きであり、妻が家事などがルーズであるという性格・生活習慣の違いに起因し、双方とも妥協しがたい性格も加わって婚姻関係が破綻した」として、夫からの離婚請求を認めた判例(東京地裁昭59.10.17)。
ex.「夫婦の生活感や価値観が大きく異なっていたことが、二人の結婚生活破綻の原因」として、生活の不一致を理由に夫からの離婚請求を認めた判例(東京高裁昭54.6.21)。
いいえ。
○ 別居しているだけでは、離婚原因にはなりません。期間が短ければ、別居だけを理由とする離婚請求は通らないと考えて下さい。
○ 裁判例では、別居期間だけでなく、別居に至る原因も考慮しております。
○ 有責性が同程度、すなわち、どちらも悪くない事案においては、別居3~4年で離婚を認めている判例がいくつもあります。有責性があっても、5~7年間と長期間に及べば婚姻関係は破綻しているとして離婚が認められやすくなります。
はい、離婚できる場合もあります。
○ 夫婦間の性の不一致も、その内容・程度・責任等によっては、「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)にあたり離婚できる可能性はあります。ただし、性交渉がないだけではなく、性の不一致をきっかけに夫婦関係全般にヒビが入り婚姻関係の破綻に至ったと言える事情が必要でしょう。
○ 夫が性的不能者である場合、夫や妻が性行為を拒否している場合、性的嗜好が異常である場合、同性愛者である場合等、これらの場合において、婚姻関係を継続しがたい重大な事由として離婚を認めている裁判例はいくつかあります。
○ 相手の意思に反して異常な性的嗜好を強要することは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があると言えるでしょう。
○ 裁判では、結婚前に性的不能を隠していたとか、結婚後に正当な理由もないのに性交渉を拒んだなど有責性も重視されています。
○ 例えば、婚姻前に性的不能を告知しなかったことが信義則違反であるとして、離婚請求を認容した裁判例もあります(京都地裁昭62.5.12)
○ 結婚したら夫(妻)が同性愛者だった事案で、「もはや正常円満な夫婦に戻ることは不可能である」として離婚を認めた判例もあります。
いいえ、必ずできるわけではありません。
○ 刑事上の犯罪行為を犯したというだけで、すぐに離婚できるわけではありません。
○ 犯罪行為の内容や程度、その後の婚姻生活をどの程度害したかで判断することになります。
いいえ。
○ リストラで退職したというだけでは、法律で定められた離婚原因にはあたりません。
○ 「婚姻を継続しがたい重大な事由」があると言えるためには、リストラを原因に別居するなどして、夫婦関係が実質的に破綻したという事情が必要です。単にリストラされただけでは離婚できないと考えて下さい。
いいえ。
○ 会社を定年退職したというだけでは、法律で定められた離婚原因にはあたりません。
○ 「婚姻を継続しがたい重大な事由」があると言えるためには、退職後働こうとしないことで生活に支障が出て、その後別居に至ったなど、夫婦関係が実質的に破綻したという事情が必要です。単に定年退職しただけでは離婚できないと考えて下さい。
いいえ。
○ 会社を退職した、会社を辞めてから再就職できないというだけでは、法律で定められた離婚原因にはあたりません。
○ 「婚姻を継続しがたい重大な事由」があると言えるためには、退職後働こうとしないことで生活に支障が出て、その後別居に至ったなど、夫婦関係が実質的に破綻したという事情が必要です。単に再就職できないだけでは離婚できないと考えて下さい。
はい。
○ 夫が働こうとしないことで生活に支障が出て、その後別居に至ったなど、夫婦関係が実質的に破綻したという事情があると言え、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があると言える場合があります。
○ 判例でも、「夫は健康で、しかもこれと言った理由もないのに、仕事もせずにブラブラしており、たまに収入があるとギャンブルに注ぎ込んでしまった」事案で、妻からの離婚請求を認めたものがあります。
○ また、「夫が、親類の就職話にも耳をかさず、それを諫める妻に対して、反対に悪態暴言を吐いた」事案で、妻からの離婚請求を認めたものがあります。
いいえ。ただし、・・・。
○ 「借金があるから」という理由だけでは「婚姻を継続しがたい重大な事由がある」とは言えず、離婚は認められないでしょう。
○ しかし、借金により生活に支障が出ている場合などは立派な理由の一つになります。
○ 具体的には、下記のケースによって生活が困難な状況に陥り夫婦生活が破綻したといえる場合には、離婚請求は認められることが多いです。
○ 離婚届の「不受理申出制度」という手続があります。この手続きを役所でしていれば、離婚届を出されても離婚は成立しません。離婚意志のないのに無断で離婚届出が出されるおそれがある場合や、離婚届署名後に離婚意志をひるがえした場合に対応して定められた制度です。
○ 手続は、本籍地の市区町村役場の戸籍係で必要事項を記入して提出するだけです。
○ これにより、最長6ヶ月間は離婚届が受理されません。
○ 6ヶ月の期間経過後もなお無断で離婚届を提出される不安があるときは、右期間満了の際に改めて同じ申出をすることができます。
○ 各用紙は、役場に用意されております。
○ 離婚届の審査は、形式審査のため、偽造された離婚届であっても受理されることになります。
○ 本件のように、市区町村役場に勝手に離婚届が提出された場合であれば、家庭裁判所に離婚無効確認の調停を申し立て、裁判所が調査の上、離婚無効の審判が下ります。
○ なお、審判後確定前に異議の申立があれば、訴訟に移行します。
○ 原則、離婚をすると、何らの手続きを要せず当然に婚姻前の旧姓に戻ります。
○ ただし、離婚の日から3ヶ月以内に「婚氏続称の届出」をすれば、婚姻時の氏を称することが可能です。
○ 父母が離婚した場合、子の氏は、父母が婚姻中の氏のままとされます。これは、離婚により復氏した母が親権者である場合や、その母の元で同居している場合でも同じです。
○ もっとも、同居しいて親権者である母と子の氏が異なると、社会生活上様々な不都合が生じます。そこで、子が母と同じ氏及び戸籍にしたい場合は、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立て」をすることになります。
離婚時に決める事項 | 決定の時期(制限) |
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(1) 離婚後の名字(氏) | 離婚の日(※2)から3ヶ月以内に決定 |
(2) 離婚後の住居の決定 | 別れて別居を始める日までに決定(※1) |
(3) 離婚後の仕事などの決定 | できるだけ離婚の日までに決定(※1) |
(4) 財産関係の清算(財産分与) | 裁判所で請求するときは 離婚の時(※2)から2年以内 |
(5) 親権者の定め | 離婚の時 |
(6) 子の養育費の取決め | 必要な時に取り決める (特に制限なし) |
(7) 面接交渉の取決め | 必要な時に取り決める (特に制限なし) |
(8) 婚姻中の夫婦の一方による不法行為に対する慰謝料の取決め | 不法行為を知った時から3年 (例外:不法行為の時から20年) |