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ご相談事例
生活費を払わない夫は法律上の悪意の遺棄にあたりますか?

2022/01/12更新

女性・ 30歳代

・子供有り

・結婚歴1~5年
30代主婦、子供は一人います。
私も主人も出身は関西なのですが、主人が転勤となり単身赴任となりました。転勤後には、本屋でパート勤務をしています。単身赴任となってから4年たちますが、昨年末に主人から離婚を切り出されました。好きな女性がほかにでき、子供もできたので私とは別れたいそうなのです。
納得がいかないため離婚を拒み続けると、主人は不倫相手の女性と同居を開始しました。それ以来、主人は関西の自宅には全く帰ってこず、それからは生活費もいれてくれません。周りに相談できる相手もいません。ネットでいろいろ検索していると悪意の遺棄にあたるのではないかと自分では判断しています。
現在のままでは、どうしようもないので、主人に話し合いに応じてもらい、離婚になるにしても慰謝料などももらいたいのです。安定した仕事を捨ててまでついてきたのに、ひどすぎますし、現在法律上は妻で扶養の義務があるのに、放置されています。法律上、悪意の遺棄にあたると主人に伝えれば、現在の態度も改まるかもしれないと、望みを抱いています。ただ、素人なので、正しい法律上の判断をお聞きしたいのです。弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 鵜飼 大
本件の場合、旦那様が単身赴任中に浮気して相手の女性との間に子供が生まれていることや生活費を支払わないなどの事情が、民法第770条1項が裁判による離婚請求の条件として挙げた事由(法定離婚事由)の1つである悪意の遺棄(民法第770条1項5号)に該当するかが問題となっています。悪意の遺棄とは、正当な理由もないのに夫婦の同居義務を履行しない場合で、遺棄をすれば夫婦共同生活がやっていけなくなることを知っていたのみならず、そうなっても構わないという不誠実な心理、態度があった場合をいいます(新潟地裁判決1961年4月24日)。

判例上悪意の遺棄が認められた例としては①夫が身体障碍者で半身不随の妻を自宅に置き去りにして長期間生活費を全く送金しなかった(浦和地裁判決1985年11月29日判例タイムズ596号70頁)、②夫が出発予定も行先も告げず、以後の生活方針について何等の相談をすることもなく妻と3人の幼い子供をおいて独断で上京した(浦和地裁1985年11月29日判例タイムズ615号96頁)などがあります。

本件では、ご主人様はほかの女性と暮らすために家を出て、生活費を入れていないことから、正当な理由なく夫婦の同居義務に違反する行為をしていると考えられます。また、そうすることで夫婦共同生活がやっていけなくなることを知り、そうなっても構わないと考えていたとも思われます。判例に照らし合わせても本件の事情は悪意の遺棄に当たるのではないかと思われます。

ただし、実務においては、悪意の遺棄は厳格に解釈されているため、単純に別居して婚姻費用を支払わないというだけでは、悪意の遺棄とまではいえないという判断をされるでしょう。もっとも、悪意の遺棄にあたらないとしても、単身赴任中に浮気をしたり生活を困窮させたのであれば民法第770条1項1号の「配偶者に不貞な行為があったこと」を主張できるといえます。

ただし、この場合、配偶者の不貞行為があったことについて裁判官に確証を得させるような証拠を提出する必要があります。本件の場合、不貞行為の相手方の女性が出産していることから、旦那様がその子を認知したことを証明する書類などが立証は可能です。かかる不倫の主張に加えて、悪意の遺棄をあわせて主張することも可能です。なお、調停や裁判で、他の離婚原因とあわせて複数の主張をすることはよく行われています。

また、本件では、裁判前の離婚交渉において、旦那様の態度を改めさせるために旦那様の行為が悪意の遺棄にあたると主張すること自体は問題ありません。

また、旦那様が離婚を希望しているとすれば、協議離婚(民法第763条)ができる可能性があります。先に述べた悪意の遺棄などの法定離婚事由は、裁判で離婚請求を認めてもらうための条件なので、交渉において協議離婚を行う場合は悪意の遺棄を主張してもよいでしょう。もっとも、財産分与や慰謝料などの協議事項で折り合いがつかない可能性があるので、相談者様がこれ以上の不利益を受けないためにも早めに弁護士に相談することをお勧めします。

ウカイ&パートナーズ法律事務所は、東京の渋谷駅にある法律事務所です。離婚相談をご希望の場合には、30分無料相談もございます。離婚に詳しい弁護士が対応致しますので、当事務所宛にご連絡下さればと思います。


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