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ご相談事例
勝手に住民票を移し不倫相手の家に行った夫に財産分与を請求したい

2024/04/19更新

女性・ 50歳代

・子供有り

・結婚歴21~25年
配偶者の不倫について法律相談をお願いします。
私には結婚して25年になる夫がおります。夫はとても優しく子煩悩な人で、2人の子供を育てている時にも子育ての相談に良く乗ってくれて不満なところは一つもありませんでした。仕事は役所勤めをしておりましたが、周囲からも真面目な仕事ぶりが評価されていました。
ところが、昨年の夏の異動で勤め先に配属された女性との間が親密になり、帰宅時間が遅くなることが多くなりました。
ある日夫を問い詰めると、その女性と不倫関係にあることを素直に告白したのです。私は頭の中が真っ白になりました。夫は、私とは離婚を考えているようで、直ぐにも相手の女性と一緒に暮らしたいといいます。私の知らない間に夫は自分の住民票を相手の女性の住所に移していました。その住民票を見せられて、これからはこの住所で暮らすからと言い残して家を出て行ってしまいました。

その後、一切家に戻らず、生活費も入れてくれません。まだ離婚はしていないので私が妻であることには変わりがありませんが、もう夫に対しての信頼はありません。裏切られた悲しさと悔しさだけしかありません。
今後離婚するにしても、少しでも私の生活が楽になる方法を考えたいと思います。これからどのように対応したら良いのか、財産はどれくらいもらえるのか等、ご指導いただきたく宜しくお願い致します。弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 東畑 義弘
本件で離婚手続に際してご主人に対して行うことができる金銭的請求としては ①不貞行為に対する慰謝料(民法第710条) ②財産分与(民法第768条1項) ③婚姻費用(民法第760条:妻の収入状況にもよりますが、仮に収入がない場合は離婚するまでの間の生活費を婚姻費用として請求することができます)及び④未成年の子供がいる場合の養育費(民法第766条1項)が考えられます。離婚すること及びこれらを含む協議事項については、当事者間の話し合いによって内容を決めることが可能です(民法第763条:協議離婚)。ここで、ご主人は不貞行為を行った事実があるため有責配偶者となるところ、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。ただし、本件では離婚については合意が成立すると思われるため、相談者様が離婚協議に応じる意思があれば話し合いをすることは可能です。協議を行った上で、協議事項の一部またはすべてに合意が成立しなかった場合には、相談者様またはご主人が家庭裁判所に調停(家事事件手続法第255条1項)を申し立てることになります。上記の請求等については相談者様が調停の場で調停委員に対して主張を行い、調停委員がご主人側の主張も聞いた上で作成した調停案に双方が合意すれば調停が成立します。協議事項の一部またはすべてに合意が成立しなかった場合は調停は不成立となりますが、本件では離婚することの合意があるため、調停での状況によって裁判官が適切と判断した場合は調停に代わる審判手続(家事事件手続法第284条1項)に移行して裁判官が職権で上記の請求を含む協議事項について定めます。審判で定めた事項の通知を当事者が受けてから2週間以内に当事者が異議を申し立てなかった場合は審判事項が確定します(家事事件手続法第287条1項)。他方、2週間以内に当事者が異議を申し立てた場合は審判が無効となります(家事事件手続法第286条5項)。この場合、及び審判手続が行われなかった場合は一方が家庭裁判所に離婚の訴え(民法第770条1項)を提起して訴訟で離婚請求することになります。訴訟提起に際してもご主人が有責配偶者であることからどちらが原告となるべきかが問題となりますが、仮に相談者様が原告になるとすると、訴訟提起の際に必要となる法定離婚事由(民法第770条1項)として不貞行為(同条1項1号)かつ悪意の遺棄(同条1項2号)を主張することができます。ただし法定離婚事由及び慰謝料請求の根拠となる不貞行為の事実については相談者様が立証する必要が生じますが、ご主人が不倫関係を認めていること及び離婚を希望していることから、自白内容の音声ないし文書化したものがあれば(相手がこの事実を争わないと想定されるため)証拠としては足りると考えられます。ご主人が原告となった場合法定離婚事由としては民法第770条1項5号「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」を主張することになりますが、本件の状況に照らすと婚姻を継続しがたい重大な事由を作った原因がご主人の側にあり、その他に主張する理由があるとしても相談者様側の離婚事由と比べると立証が難しいと思われます。
訴訟(または審判手続)で裁判所が慰謝料について判断する場合、離婚原因についての責任の程度、婚姻期間、双方の経済状況等が考慮されます。一般の離婚の場合には平均としては300万円くらいで、財産分与と一緒になされた場合や配偶者による暴力の被害者側の負傷程度が重い場合でも500万円程度で、1,000万円を超えることは稀です。
財産分与が慰謝料を含めたものとしてなされる場合、財産分与の割合は、財産分与の対象となった財産の形成に対する寄与度によって決まります。財産分与の寄与度に関しては、妻が専業主婦であった場合には原則的に2分の1とされます。
婚姻費用は通常の生活を維持するのに必要な生計費を請求するもので、裁判所が公表している算定基準があります。請求権者と義務者の収入・未成年の子の人数・年齢等により判断されますが、ご主人が給与所得者であることから仮に相談者様の前年度収入がゼロで15歳以上の未成年のお子様が1人とすると、ご主人の前年度年収が500万円とすると10~12万円、600万円の場合12~14万円、700万円で14~16万円となります。なお、離婚が成立するまでの婚姻費用については未成年のお子様がいない場合も請求することができます。
離婚後の養育費についても裁判所が公表している算定基準があり、支払義務者の収入や未成年の子の人数・年齢などによって目安となる金額が算出されます。ご主人が給与所得者であることから、仮に相談者様の前年度収入がゼロで15歳以上のお子様が1人とするとご主人の前年度年収が500~600万円であったとすれば8~10万円、700~800万円で10~12万円となります。なお、お子様が2人とも成年に達している場合は養育費の請求はできないことになります。2022年4月1日より、成人年齢を18歳と定めた改正民法(第4条)が施行されるためご注意下さい。本件で慰謝料・財産分与・婚姻費用及び養育費につき相談者様が請求可能な金額の算定、及び協議や調停での交渉方法等につきより詳しくは弁護士にご相談頂ければと思います。

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弁護士 東畑 義弘
TEL:03-3463-5551

 

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