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ご相談事例
旦那が子供に暴力を振るっており離婚も考えています

2022/04/18更新

女性・ 30歳代

・子供有り

・結婚歴6~10年
助けて下さい。旦那が子供に暴力を振るっています。私が止めに入ると私にまで暴力を振るいます。いつもは優しい旦那なんですが急に態度が豹変して周りが見えなくなりこのような事が起きます。私の周りの人達はそんな事する人じゃないだろうと思っているぐらいいい人なのです。暴力を振るわれているのを見たことあるのは私と子どもだけです。どうしたらこれを止められるのか相談したいです。また私の友達でもDVに悩んでいる子が何人かいてます。皆誰かに相談しても解決せずに困っています。同じ悩みを抱えている方達の集まりにも参加した事があります。そこで自分だけじゃないと思い少し安心しました。ほとんどの方は結婚していなくて彼氏に暴力を振るわれてる方ばかりでした。私は結婚前は暴力を振るわれた事がなかったので結婚してまさか親子の間でDVが起きるとは思ってもいなかったので対処の仕方がわかりません。

このまま子供へのDVが続くようであれば離婚も考えています。弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 上野 一成
親子間でのDV被害が深刻で身の危険を感じるようでしたら、まずはお子様あるいはご自身の身を守ることを先決に考えた方がよいと思われます。ご主人との距離を置くために、別居して家を出ることが第一に考えられます。

転居先を告げずに家を出たとしてもLINEなどで脅迫されたりして身の危険を感じる場合は配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)に基づく支援や保護措置を受けることができます。まず、同法に基づき配偶者暴力相談支援センターに指定された機関(県の女性センターなど)、社会福祉事務所、警察署(生活安全課等)などの機関に相談をして下さい。また「今後身体に対する暴力を振るわれて生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きい」場合には、地方裁判所に申立てをして保護命令(DV防止法第10条1項)を出してもらうことも考えられます。

保護命令には、①命令の効力が生じた日から起算して6か月間加害者が被害者の(移転先の)住居や勤務先その他の身辺に近づくことを禁止する接近禁止命令と②同2か月間被害者と同居していた住居から退去を命じる退去命令があります(②は申立て時点で同居していた場合に限られます)。また別途の申立てにより命令の効力が生じた日から起算して6か月を経過するまでの間、面会を要求すること・その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、またはその知りうる状態に置くこと(監視カメラを設置するなど)・無言電話をかけたり電話やFAX・メールを連続送信すること・汚物や動物の死体などの著しく不快・嫌悪の感情を催させる物を送付し、またはその知りうる状態に置くこと・性的羞恥心を害するような事項を告げ、またはその知りうる状態に置くことなどの8つの行為をいずれも禁止する命令を発令してもらうことができます(DV防止法第10条2項)。また、未成年の子と同居している場合で、DV行為を行った配偶者が子供を連れ戻す疑いがありそれによって被害者と面会せざるを得ない状況になることを防ぐ必要がある場合は同時に子に対する接近禁止命令を申し立てて発令してもらうことができます(同法第10条3項)。(なお、子への接近禁止命令を申し立てる場合は相談の段階でこれらの命令が必要と考えられる事情についても言及する必要があります。)本件では主にお子様に対して暴力行為が行われていた状況であったと伺われますが、相談者様も暴力を受けていたことから子に対する接近禁止命令の申立ても行うことができると考えられます。なお、これらの保護命令の申立ての際に、(a)配偶者暴力支援センターまたは警察署の相談記録 (b)手数料の収入印紙1,000円と郵便切手2,300円分 (c)申立人と相手方が法律上または事実上の夫婦であることを証明する資料(双方の戸籍謄本または住民票など) (d)申立人と相手方が生活の本拠を共にすることを証明する資料((c)で双方の住民票があれば足りるほか、建物の登記事項証明書または賃貸借契約書の写し・公共料金の請求書の写し等)(e)DVを受けていたことを証明する資料が必要となります。保護命令の申立て時はしばしば状況が切迫していることから、後述する離婚訴訟の証明資料ほどの厳密さは求められませんが、最低でも脅迫的な内容のメールやLINEトーク画面などはスクショして残すようにしておいて下さい。申立ての手続きの際に面談を行うため、申立てを行う地方裁判所の民事部に事前に連絡して日時を決める必要があります。保護命令が発効した後、相手方が保護命令に違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

また、お子様や相談者様に対する暴力が断続的にであっても続くとすれば、別居後に離婚することも考えられたほうがよいかもしれません。本件のような場合は協議離婚(民法第763条)は困難と思われるため離婚を希望される場合は相談者様が家庭裁判所に家事調停の申立て(家事事件手続法第255条)を行い、調停委員を介してご主人のお子様や相談者様に対するDV行為があったことを主張することになります。
調停委員がご主人の主張と両方を聞いたうえでお子様の親権者・慰謝料・財産分与などの協議事項を定めた調停案を作成し、合意が得られれば調停が成立し離婚することが可能になります。家裁が発行する調停調書を受け取った後、相談者様の居住地または本籍地の役所の戸籍課に離婚届を提出して下さい。

もっとも、DVを原因とする離婚調停の場合は加害者である配偶者が調停に出頭しなかったり、離婚や協議事項を拒否し続けて調停が不成立になる可能性も少なくありません。調停不成立の場合は相談者様が家庭裁判所に離婚の訴え(民法第770条1項)を提起して裁判で離婚請求することになります。判例上、DVは民法第770条が要求する法定離婚事由の1つ「婚姻関係を継続しがたい重大な事由」として認められています。
離婚裁判においてDVの存在を証明するために役立つものとして①暴力による痣や傷の写真(被害者本人のものとわかるようにできる限り顔を撮影範囲に収めて下さい)②お子様(及び相談者様)が受信された医療機関の医師の診断書③いつどこでどのようにして行われたかを記した日記や手帳④相談者様が心療内科等を受診した診断書⑤配偶者暴力相談支援センターや警察等への相談記録などを用意されることをお勧めします。⑤の記録は相談を受けたそれらの機関が残してくれるもので、上記の保護命令を申し立てる際にも提出資料として必要になります。①から④は揃っているほうが確実に立証することが可能になりますが、仮に用意できなかったとしても別居の事実や⑤の記録と保護命令があれば立証は可能です。

まず、お子様と相談者様の安全を確保して、お子様がこれ以上の暴力の被害を受けることを防ぐために必要なサポートを受けるとともに、離婚を希望される場合は離婚手続きを円滑に進めることができるように弁護士にご相談下さい。

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