ウカイ&パートナーズ法律事務所では、離婚調停が不成立になった場合についてのご質問を頂くことがよくあります。離婚調停の不成立について離婚問題に精通している弁護士が解説します。
離婚調停の不成立による終了とは、調停機関が当事者間に合意が成立する見込みがない場合、または成立した合意が相当でないと認める場合において、家庭裁判所が調停に代わる審判をしないときは、調停が成立しないものとして事件が終了します(家事審判規則138条の2および142条)。調停が不成立になるのは、具体的には以下のような場合です。
①双方の意見の対立が激しくまとまらない場合
②当事者の一方が離婚を拒否し続けている場合
③離婚には同意しても慰謝料請求や財産分与などの協議事項に合意ができなかった場合
④当事者の一方が調停に出席せず、話し合いができない場合
もう少し詳しくみていきましょう。
離婚調停は以下の流れで行われます。「離婚調停不成立」とは、調停の終了原因のうちのひとつです。
①家庭裁判所に離婚調停を申し立てる
夫婦間の話し合いで離婚条件の一部または全てが成立しなかった場合、あるいは離婚を切り出したものの相手が承諾しなかった場合は、離婚を希望する側が申し立てる形で家庭裁判所の調停手続を利用することができます(家事事件手続法第255条1項)。
この調停は一般的に離婚調停といわれていますが、正式には夫婦関係調整調停(離婚)という名称です。申し立てが受理されると調停期日の日時・場所が指定され、当事者双方へ呼出状が送付されます。
②調停期日において話し合いが行われる
離婚調停は当事者が(原則として同じ期日に)別々の時間帯に調停室に入り、調停委員に対してそれぞれの主張を行い、それらをもとに調停委員が調停案を作成する形で進められます。なお、コロナ禍やDV案件等、個別の事情に配慮してオンラインで調停手続を行うことが可能な場合があります。調停期日は月1回の頻度で行われ、調停期間は半年から1年間で終了することが多いですが、長引くケースでは1年以上かかることも珍しくありません。
③調停の終了
(ⅰ)話し合いがまとまったら調停成立
調停案に対して双方が合意すれば調停が成立します。調停が成立した場合は家庭裁判所がその内容を記載した調停調書を作成し、これが確定判決と同一の効力を持つことになります(家事事件手続法第268条1項)。すなわち、慰謝料や養育費等の金銭支払いに関係する事項に強制力が発生し、支払われなかった場合に強制執行が可能になります。
(ⅱ)話し合いがまとまらなかったら調停不成立
話し合っても合意が見込めない場合には「調停不成立」という形で調停が終了します。当事者間に合意が成立する見込みがない場合には、調停を続ける意味がないため、調停を不成立として終了することになります。
調停の終了原因として、調停成立、調停の不成立の他にも申立人が申立てそのものを取下げてしまう「取下げ」や当事者の死亡による「当然終了」、裁判所としてはその事件を取扱わないことにする「なさず」等があります。
申立人は、相手方の同意の有無に関係なく、いつでも調停の申立てを取り下げることができます。時期は、調停の継続後調停が成立・不成立等によって終了するまではいつでも取下げが可能です。取下げによって、調停ははじめから継続していなかったものとみなされ、申立時に遡って申立ての効果が消滅し、その結果、調停申立中になされた主張は請求もすべてなかったことになります。
「なさず」とは、当事者が求めている調停の内容自体が法律や社会正義に反する場合、例えば、不貞関係を継続することや認知しないことを条件に一定の金銭の支払をする等、不当な目的で調停を申立てたと認められる場合には、調停をしない措置「なさず」で調停事件を終了させることもあります。
家庭裁判所が公表している司法統計によると60,542件のうち、約六分の一にあたる10,360件が調停不成立となっています。過去3年の調停不成立の割合は以下のとおりです。
年 | 調停総数 | 調停成立 | 調停不成立 | 不成立割合 |
令和元年 | 60,542 | 32,532 | 10,360 | 17,1% |
平成30年 | 63,902 | 35,080 | 10,758 | 16,8% |
平成29年 | 65,725 | 36,079 | 10,866 | 16,5% |
(1)調停の呼び出しに相手が応じない
調停期日を数回開いても相手方が出頭しない場合、調停は不成立となります。どちらかが出頭しなければ当事者間で合意が成立する見込みがないからです。
もっとも、1回の欠席ですぐに不成立となる場合は少なく、何回か無断欠席を続けた場合に不成立となる場合が多いようです。
(2)相手が離婚を拒否
当事者の一方が離婚を拒否し続けている場合、離婚調停は不成立となります。どちらか一方でも離婚に合意しない限り、調停は成立しません。当事者間に合意が成立する見込みがない場合、調停は不成立となりやすいでしょう。
(3)親権を争っている
調停において、当事者間で離婚については合意が出来ているが子供の親権者について争いがある場合には、離婚調停が不成立となります。
民法上夫婦の一方を親権者と定めなければ離婚届が受理されず離婚が成立しないため、離婚が成立した後は共同で親権を行使することは認められていません。
離婚後親権者とならなかった親は面会交流が円滑に行われないと親たること否定されるに等しい状況におかれてしまいます。そのため離婚の際の紛争で最も熾烈な争いは子供の奪い合いといえます。
(4)慰謝料や財産分与でもめている
親権と同じく、離婚については合意が出来ているものの、財産分与の対象や金額、慰謝料や養育費の金額などで揉めて合意に至れないことも多く、離婚調停が不成立となるケースも少なくありません。
協議事項で不利な要求を認めさせないためにも弁護士にご相談下さい。
調停が不成立になった後の手続きには2通りがあります。
①審判離婚
調停が不成立になった場合で、離婚することに合意が成立しているようなケースでは家庭裁判所の裁判官の判断により調停に代わる審判手続(家事事件手続法第284条1項)に移行します。審判手続では協議事項について裁判官が職権で決定します。
審判で決定した事項の通知を当事者が受領してから2週間以内に異議申立てを行わなかった場合は審判事項が確定し強制力を持つことになります(家事事件手続法第268条1項)。
ただし、2週間以内に当事者が異議申立てを行った場合は裁判所がそれを却下しない限り、審判事項が無効になります(家事事件手続法第286条5項)。このため審判手続は実効性が弱くあまり利用されていません。
②離婚裁判
調停が不成立になった場合に、さらに離婚を求めたい場合には離婚訴訟を起こして目的を達成させるほかありません。
調停が不成立になった場合で審判手続が行われなかった場合、または審判事項が無効になった場合は離婚を求める当事者が同一の家庭裁判所に離婚の訴え(民法第770条)を提起することになります。訴状には請求の趣旨と請求の原因を記載する必要があります。
この場合は、民法第770条1項1~5号に定められた「法定離婚事由」のいずれかまたは複数に該当することを裁判で主張・立証する必要があります。従って、例えば夫の不貞行為を原因として離婚請求する場合は、民法第770条1項1号の「配偶者の不貞行為」の事実を立証できるだけの証拠を揃える必要があります。
専門的な知識が必要となりますので、希望に近い判決を得るためには弁護士に依頼することをおすすめします。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する弁護士全員が離婚問題の専門家として、離婚調停に関連するあらゆるご質問にお答えし、必要な法的手段をとるためのサポートを行わせて頂きます。当事務所の法律相談は初回30分無料でご利用頂けます。
また、当日のご予約も可能で平日夕方のお仕事帰りの時間や土日にもお越し頂けます。離婚調停のことでご質問がある方やトラブルに悩んでいる方は是非、当事務所の30分無料法律相談をお申込み下さい。
参考文献:「離婚調停」秋武憲一著 日本加除出版
「離婚調停ガイドブック」梶村太市著 日本加除出版
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