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養育費・婚姻費用のお役立ちコラム
養育費は強制執行で回収可能?

2022/09/15(木)

養育費が支払われない場合に利用できる手続き

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、離婚に関するご相談の中で元配偶者からの養育費の支払いが途絶えてしまったのでどうすればよいか等の質問を頂くことが非常に多くあります。本記事では、養育費が支払われなくなった場合の対処方法等について解説します。
参照:裁判所「養育費に関する手続

調停、審判等で養育費を支払うことが決まったのに義務者が養育費を支払わない場合、支払をうける権利を有する者が利用できる手続として、「履行確保」と「強制執行」があり、「強制執行」には、「直接強制」と「間接強制」があります。

①履行確保
履行確保には、調停、審判、判決などをした家庭裁判所が、権利者からの申出を受けて、義務者に対して支払を履行するように勧告するなどの手続があります。履行確保は強制執行に比べると効力は弱いものの、費用がかからず、口頭での申立ても可能である等、手続も簡便であることが利点です。

② 直接強制 
直接強制とは、義務者の財産(不動産、債権など)を差し押さえて、その財産の中から支払を受けるための手続です。主な例としては義務者の給料や預貯金を差し押さえます。下記にも述べますが、養育費未払いの原因が支払能力がないことによる場合は、間接強制の制度が利用できないことから、ほとんどの場合、養育費が支払われない場合の手段として直接強制が行われています。

③ 間接強制 間接強制とは、債務を履行しない義務者に対し、一定の期間内に履行しなければその債務とは別の関節強制金を課すことを警告した決定をすることで義務者に心理的圧迫を加え、自発的な支払を促すものです。ただし、義務者に支払能力がないために養育費を支払うことができない場合などでは、間接強制の制度を利用することはできません。

養育費の強制執行を行う際の手順と必要書類

強制執行認諾文言付き公正証書として作成した協議書や調停調書等が存在する場合は、以下の手順で強制執行手続を行います。

1.執行認諾文言付き公正証書または調書及び送達証明を用意する  
 債務名義になる書面を用意します。送達証明書は、公正役場や家庭裁判所で交付できます。

2.義務者の現住所を把握する
正当な理由がある場合は、本人以外の第三者による住民票発行請求が可能です。義務者と婚姻関係があったことを示す戸籍謄本や、1の写し、養育費の振込の記録のある預金通帳等を提示することで発行請求できます。

3.義務者の財産を調査する
直接強制をするには、権利者が義務者の財産を調査し、何を差し押さえるのかを決める必要があります。養育費の支払を受ける上で最も有効なのが債務者名義の給与債権と預貯金債権の差押えです。したがって、義務者の勤務先や口座を特定しておく必要があります。特定するには、弁護士に依頼すれば弁護士会照会で調査が可能です。また、一定の条件を満たせば、義務者による財産開示手続と第三者からの情報取得手続を利用することができます。

給与債権の差押えは、税金等を控除した手取り金額の2分の1を超えない範囲で、定められた養育費の月額の差押えが可能です(民執法第152条1項3号)。 

預貯金については給与債権のような差押範囲の制限がなく、全額を差押対象とすることができます。従って未払い分の金額を一括差押することも可能です。

ただし、預貯金の差押が認められるのは1回限りであるため、残高が未払い分に満たなかった場合に以降入金された預貯金を差し押さえるためには再度の申立てが必要になります。

4. 裁判所に強制執行の申立をする  
直接強制は、地方裁判所へ強制執行の申立を行います。義務者の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てます。

5. 差押え・取立て 裁判所が差押命令を発し、義務者と差し押さえる第三者機関(勤務先や銀行)に差押命令を送達します。債権差押命令が債務者に送達された日から1週間を経過したときは、権利者はその債権を自ら取り立てることができます。第三者機関(勤務先や銀行)から支払を受けたときには、直ちにその旨を裁判所に届け出ることが必要です。

養育費の強制執行を行う上での特別な制度

1.将来分の差押え  
差押えは、通常の場合、支払期限が過ぎても支払われていない分(未払分)についてのみすることができます。しかし、養育費については、未払分があれば、その分だけに限らず、将来権利者に支払われる予定のまだ支払期限が来ていない分(将来分)についても差押えをすることができます。 

将来分について差押さえることができる財産は、義務者の給料や家賃収入など、義務者が継続的に支払を受ける金銭です。預貯金の払戻しや退職金の支給など1回で支払が終了するものは対象になりません。  

受取方法は、権利者自身が義務者の勤務先等に対して支払を求める必要があります。

2.差押えの範囲 
養育費については、特例として、給料の2分の1に相当する部分まで差し押さえることができます。通常は、原則として4分の1に相当する部分までです。

養育費の強制執行を行う上での注意点

・義務者が退職・転職してしまった 
義務者が勤務先を退職してしまった場合や転職してしまった場合は、その勤務先からの給与を差押さえることはできません。その場合も上述した「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」を活用することで、転職先を突き止められる可能性があります。

・預金口座にお金が入っていない 
預金口座にお金が入っていなければ、せっかく預貯金を差押さえても養育費を回収できません。したがって、預金口座にお金が入っているタイミングで差押さえることが重要です。例えば、給料日が25日の場合、25日の直後に預貯金を差し押さえられるように強制執行の申立のタイミングを図ることが必要になります。強制執行の申立から差押の効力が発生するまでには数日間かかりますので、強制執行の実務に精通した弁護士に依頼するのが効果的です。

・義務者の住所がわからない
義務者の住所がわからない場合でも弁護士に依頼した場合は、住民票等を調査して義務者の現住所を把握することは可能です。ただし、義務者の住所調査に日にちを要するため、強制執行の申立てに通常よりも時間がかかってしまいます。

・義務者が破産した
義務者が自己破産をしたとしても養育費は支払ってもらえますが、破産手続中は、強制執行ができなくなります。破産手続が終われば強制執行も可能です。もっとも、自己破産によって養育費の減額を求められることがあります。
義務者が自己破産をした場合の対応については弁護士にご相談下さい。

養育費の強制執行は弁護士に相談を

以上に述べたように、未払いの養育費の支払を受けるための手続きは複雑で面倒なものが多く、特に強制執行手続や、執行認諾文言付公正証書を作成していなかった場合の手続を権利者本人が行うことは困難が伴います。この点、養育費関連の手続きのプロである弁護士に相談すれば、適切な対応を迅速に行うことで養育費の回収を受けられる可能性が高くなります。養育費が支払われなくなった場合は諦めずに弁護士にご相談下さい。 

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する全弁護士が離婚のご相談に伴う養育費についての疑問や、実際に生じている問題に対処する方法等について懇切丁寧にお答えします。当事務所の法律相談は初回30分無料で、平日の夕方のお仕事帰りの時間や土日にもお越し頂けます。養育費のことでお悩みの方は、ぜひ当事務所の30分無料法律相談をお申込み下さい。

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