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財産分与のお役立ちコラム
財産分与の割合は?

2022/10/03(月)

財産分与の割合は原則的に2分の1

財産分与にあたっては財産分与の対象となる財産の特定に手間がかかることや、住宅ローン等マイナスの財産の取り扱い・分与割合等をめぐって争いが生じやすく、当事務所でも財産分与の割合についてのご相談を頻繁に頂いています。 

財産分与の割合については、夫婦間のプラスの財産とマイナスの財産を合算控除した価額の2分の1が原則です。つまり、割合をめぐって双方が合意できなければ、裁判所は2分の1と定めることになります。これは、分与を受ける側の資産・収入状況にかかわらず、婚姻期間中の財産形成には夫婦の双方が寄与しているという考え方に基づいています。 

以前は妻が専業主婦であった場合の財産分与割合を2分の1未満にする判例もありましたが、現在では、専業主婦も夫婦の財産形成への貢献度が夫に劣るものではないという考え方のもとに、分与割合を2分の1に定めるのが妥当とされています。

ただし、個々の事情によっては2分の1に分けるのが公平でない場合もあります。2分の1ルールの原則が適用できる場合と例外的な場合について弁護士が解説します。

財産分与の割合が2分の1にならない場合

1特殊な才能・能力によって財産を築いたケース 
一方が億単位の年収を稼ぐプロスポーツ選手であったり、一部上場企業や医療法人・学校法人等の経営者であるような場合で、財産形成が、婚姻前からのその個人の才能や努力によるところが大きい場合です。 

この点、大阪高裁2014年3月13日判決は、夫が開業医として医療法人を経営していた事例で、医療法人の持ち分を純資産価額の7割とした上で、財産分与の割合を夫6割、妻4割と定めました。 

 2一方の浪費が激しかったケース 
夫婦の一方が共有財産を浪費したような場合、裁判所の審判や判決では浪費した側に対する財産分与割合を2分の1未満にすることがあります。 

この点、水戸家裁2016年3月の判決は、夫の年収900~1,500万円程度、妻の年収830万円(ただし資産が1億5000万円程度)で夫に多額の借金があり、妻の家事育児の負担が大きかったという事例で、2分の1ルールを適用すると妻に酷であるとして財産分与割合を夫3割、妻7割と定めました。  

3特有財産を元手にして財産を築いたケース 
これは、夫婦共有名義の財産を得る上で、一方の独身時代からの貯金や、一方が相続で得た財産を充てたような場合です。

 この点、東京高裁1995年4月27日判決は、夫婦共有名義のゴルフクラブ会員権を購入する際に、夫の特有財産から支出していたという事情があった場合に、財産分与の割合を夫64%、妻36%と判示しています。

共有財産は財産分与の対象

共有財産とは、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持していた財産です。必ずしも共有名義であることは必要なく、夫または妻の名義であってもその財産の形成に配偶者が寄与していると認められるものは共有財産とみなされます。 

1婚姻期間中の双方の仕事の収入は共有財産 
例えば、夫が企業の正社員である場合に夫の給料は夫名義の預貯金債権となりますが、夫がフルタイムで働き、給料の支払いを受けることができるのは家庭での妻の貢献があるためと考えることができます。

したがって、夫名義の預貯金の形であっても共有財産とみなされ、給料が入金される口座残高分が財産分与の対象となります。婚姻中に妻が仕事で得た収入についても同様に共有財産とみなされます。 

また、民法第762条2項は「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。」と規定しています。この例として子供が未成年者である間の子供名義の預貯金等があります。

 2退職金について 
ⅰ将来支払われる予定の退職金について 
問題になるのは、離婚後何年もしてから支払われる予定となっている退職金の扱いです。

まず、将来支払われる退職金を財産分与の対象とすることができるかについて、東京高裁1998年3月13日決定は「支給される高度の蓋然性があれば」財産分与の対象となるとしています。

仮に、対象となる場合であっても、将来の退職金は、離婚後(離婚前に別居していた場合はその期間も含めて)の別居期間を経て支給されるため、財産分与の対象となるのは同居期間に対応する金額のみとなります(東京高裁2010年6月23日審判・東京地裁1999年9月3日判決)。 

ⅱ既払いの退職金について 
退職金が既に支払われている場合は、現存する残高分が共有財産として財産分与の対象となります。

ただし、離婚前に別居期間があった場合はその期間を除いた同居期間のみに相当する割合を共有財産とした審判例もあります(横浜家裁2001年12月16日審判)。 

3その他 
その他として共有財産とみなされるのは、婚姻中に購入した一戸建て住宅、または、マンション等の不動産、自動車・テレビ・冷蔵庫・パソコン等です。

特有財産は財産分与の対象外

特有財産については、財産分与の対象となりません。民法第762条1項は「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産はその特有財産とする。」と規定しています。 

特有財産に該当する財産は、まず夫婦それぞれが婚姻前に得た財産です。これには仕事の給料や報酬のほか、相続や贈与等により無償で得た財産、購入した動産・不動産すべてが含まれます。 

また、婚姻後であっても相続・贈与等により無償で取得した財産については特有財産となり、財産分与の対象になりません。これについては誤解している方が多いので特に注意が必要です。当事務所でも「最近妻が相続で財産を得たのでこれを分けるべきではないか」という質問をよく頂きますが、相続により取得した財産は、財産分与の対象になりません。

なお、共有財産に含まれるのか、特有財産となるのか識別が難しいものの1つに同一名義・同一口座の預貯金があります。例えば、婚姻の時点でその口座の残高が一定程度あった場合、その後の給料等の入金と生活費等の引出しとが頻繁に行われる中で、婚姻中に購入した物がどこまで婚姻前の預貯金分から支払ったものといえるかがわからなくなるためです。婚姻期間が短い場合は婚姻前の残高を特定できる余地がありますが、現在の残高については原則として共有財産とみなされると考えた方がよいでしょう。

財産分与の割合を決める方法

1 話し合いなら割合を自由に決められる
まず、夫婦間で財産分与について話し合います。事前に、共有財産と特有財産を識別してから共有財産の中でプラスの財産とマイナスの財産をリストアップして双方で確認して下さい。

これらから共有財産を特定し、住宅ローン等のマイナスの財産を控除した上で、分与する財産とその金額・価額を協議書に記載します。 

協議書自体には法的な強制力が生じないため、財産分与が実行されなかった場合に強制執行を可能にするためには、執行認諾文言付き公正証書として公証役場で協議書を作成する必要があります。 

2協議が夫婦間でまとまらなかった場合は離婚調停または財産分与請求調停を申し立てる 
財産分与及び、その他の協議事項(子供がいる場合の親権者の定め・面会交流・養育費等)について合意できなかった場合は、離婚を求める側が家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停[離婚])を申し立てます。

財産分与についてのみ合意に至らなかった場合は財産分与請求調停を申し立てることもできます。 

3調停不成立の場合は審判または裁判で裁判官の決定を受ける 
調停では、双方の主張に基づき調停委員が財産分与に関する調停案を作成します。双方が合意できれば調停は成立します。

調停案に合意できなかった場合、調停は不成立となります。このうち、裁判官の判断により審判手続(家事事件手続法第284条1項)に移行した場合は、裁判官が職権で財産分与についての定めを行います。

財産分与について困ったときは弁護士にご相談を

上述のように、夫婦共有名義の財産については共有財産とみなすことが容易である一方、それぞれの名義の財産についてはしばしば識別が困難になることがあります。

また、そもそも夫婦の一方、または、双方が共有財産と特有財産の区別を知らないという場合もあります。 

財産分与にあたって、ご自身が相続や贈与によって取得した財産の分配を要求されたり、あるいは配偶者名義の個別の財産の分配ができるか否かで迷ったり、争いが起きたような場合は、離婚問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。

離婚問題に強い弁護士に相談すれば、経験と知識に基づいて共有財産やマイナスの共有財産の特定を迅速に行うことができます。

また、財産分与を含めた協議書の作成及び公証役場での手続、執行認諾文言付き公正証書や調停調書が存在しているのに財産分与に不履行があった場合の強制執行手続等についても代理することが可能です。 

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する弁護士全員が離婚の専門家として、財産分与に関係するあらゆる悩みに懇切丁寧にお答えします。財産分与について疑問やお困りのことがありましたらぜひ、当事務所の30分無料法律相談をご利用下さい。

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