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ご相談事例
妻が突然子供と家を出て離婚請求されました。DV冤罪に悩んでいます。

2023/04/08更新

男性・ 40歳代

・子供有り

・結婚歴6~10年
今年で43歳になる男性です。現在飲食系の自営業を営んでいます。
妻と結婚して7年になるのですが、最近の妻の様子がどこか不自然だったのを覚えています。私が近づくと怯えているような態度を取るのです。なぜそうなってしまったのかはわかりませんが、性格的に被害妄想の強い女性でした。つい最近のことになるのですが、店から自宅に帰ると、自宅の鍵が開いているのです。普段は閉めているので、私は「泥棒でも入ったのか」と不安になり自宅へ入りました。自宅には誰もいませんでした。その日から妻と子供は私の前から消えてしまいました。その後家裁からDV被害の慰謝料請求と離婚調停の通知が届いたのです。明らかに妻の被害妄想からのDV冤罪です。私には全く身に覚えがありません。錯乱状態の妻から子供を取り戻す為とDV冤罪を証明する為、必死に戦っています。
弁護士先生、私は妻から子供を取り戻し、冤罪を証明できるのでしょうか。弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 上野 一成
①お子様の引渡しを求める方法について:現行法のもとで可能な方法として(a)家事審判による監護者指定・子の引渡しを求める調停/審判(早急に引渡しを求める場合には審判前の保全処分:家事事件手続法第157条1項3号)、(b)人身保護法に基づく子の引渡し請求(人身保護法第2条2項:被拘束者のための人身保護請求)が考えられます。
(a)監護者指定・子の引き渡しを求める調停は共同親権者同士の合意により子の引渡しを行うもので、合意に至らない場合には審判手続に移行します。なお、監護者指定・子の引渡しの家事手続を求める場合は片方が子供を無断で連れ去っている状況がほとんどであるため、調停で解決することは期待できず、実際この件で調停はあまり行われていません。審判においては家庭裁判所の調査官が監護親の自宅に訪問して生活状況を確認するなどの調査を行います。調査官の作成した報告書に付された意見をもとに、将来に向けて父母のいずれが子の監護を行うのが子の福祉にかなうかという点を重視して判断されます。判断基準としては監護者としての適格性、監護の継続性、子の意思、その他母性優先の原則や子供の身柄拘束の違法性などが厳格に考慮され、子の監護をするのにふさわしいと判断された場合には子の引渡しが認められます。当事者が審判事項に不服がある場合は、審判事項証明書を受領してから2週間以内に高等裁判所に即時抗告を行います(家事審判手続法第110条)。調停証書や審判事項が確定すると確定判決と同じ効力が発生するため(家事事件手続法第268条1項、第287条1項)、子の引渡し調停・審判では強制執行も可能です。最近改正された民事執行法により、子の福祉に配慮した「子の引渡し強制執行」の規定(民事執行法第174条)が新設されました。これにより、子の急迫の危険を防止する必要があると認められるときは、執行官が引き渡しを拒否している監護親の同意なく子供が住んでいる住居に立ち入り、子供を捜索して連れてくることが可能になりました。調停や審判に要する時間は事例により異なり、数か月で終わることが多いですが特に審判では1年以上かかることもあります。調停や審判を経ていると、仮に子供が劣悪な環境に置かれている場合、子供の福祉に反するため著しい損害または急迫の危険を避けるため必要とするときに(家事審判手続法第115条・民事保全法第23条2項)、審判手続の前に子の引渡しの保全処分を申し立てることができます。保全処分の審理は迅速に行われ、仮の処分として処分が出てから2週間以内に子供の引渡しを受けることができます。また、審判に対して即時抗告が行われた場合でも保全処分は原則として執行停止にならないため(家事審判手続法第111条)高裁で即時抗告の審理が行われている間も子供は取り戻した親の元にいることができます。従って、保全処分が出ている状況で、保全処分により子供を取り戻した親に対して監護権と子の引渡しを認める審判が出た場合は、強制執行を行う必要がないことになります。
(b)人身保護請求を行うための要件は保全処分よりもさらに厳格で、監護親による拘束に顕著な違法性があることが必要です。人身保護請求を行うと1週間以内に審問が行われ、審問で監護親の行動に違法性が認められると5日以内に子供の引渡しを命じる判決が出ます。また、子の引渡し請求の事例では①裁判所が審問のために当事者を召喚した際に監護親(拘束者)が子(被拘束者)を出頭させない場合は監護親を勾留することができること(人身保護法第12条)、②保護命令書が監護親に送達されると子が裁判所の支配下に置かれること(人身保護規則第25条1項)などから引渡しが実現しやすいなどのメリットがあります。人身保護請求は原則として弁護士を代理人として行う必要がありますが、特別の事情がある場合には請求者自らが行うことができます(人身保護法第3条)。請求を行う裁判所は請求者の住所、被拘束者の住所、拘束者の住所いずれかを管轄する高等裁判所または地方裁判所です(同法第4条)。正規の調停や審判手続を経ると引き渡しが認められるまで何か月もかかってしまうおそれがあるため、本件でそれまで引き渡しを待つことが適切でないことは明らかです。子の引渡し保全処分・人身保護請求とも、審査が厳しいため却下されることも多いのですが、仮に保全処分を申し立てて却下された場合でも本案の調停または審判で引渡しが認められる可能性もあります。奥様だけがお子様を監護していることによるお子様に対する危険性の急迫度・お子様が受けると考えられる悪影響の程度によりいずれかによることが適切といえますが、本件の場合はまず審判申立て及び審判前の保全処分申立てを行うことをお勧めします。
②DVの冤罪を証明することについて:慰謝料(民法第710条)は不法行為によって被害者が被った精神的苦痛に対する賠償請求です。従って慰謝料請求が認められるためには相手方の有責不法な行為が原因となっていることが必要となり、それを請求者が証明する必要があります。DVが事実無根であればこれを証明することは難しいのではないかと思われます。
なお、離婚に関しても、仮に調停が不成立となり奥様側が離婚の訴えを提起する場合、民法第770条1項1~5号に定められる法定離婚事由のいずれかに該当することを主張する必要があります。奥様側としては相談者様の「暴力行為」によって婚姻関係が破綻したことが婚姻を継続し難い重大な事由(同条第1項5号)に該当すると主張することになると想定されますが、これについても原告側の立証が必要となります。本件の場合DVは事実無根であるということなので立証できるだけの証拠を提出することができるとは考えにくく、DVを原因とする離婚請求が認められることはないと考えられます。相談者様がお子様の引渡しを受けられるよう、及びDVの冤罪証明に向けて最善の方策をとるため弁護士にご相談頂ければと思います。

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TEL:03-3463-5551

 

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