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ご相談事例
私のDV冤罪を名誉毀損として訴えたいです

2023/05/18更新

男性・ 30歳代

・子供無し

・結婚歴1~5年
34才の男性サラリーマンです。妻は同じ年で子供はいないため、共働きで働いています。
結婚した当初から双方ともに仕事が忙しく、平日の夕食はほぼ外食で、会話を交わすのは土日のみでしたが、夫婦仲は良好だと最近まで思っていました。
家事は手がすいた方がするという取り決めでしたが、妻が担う部分が多く、その点では負担をかけていたと思いますが、家が片付いていないことについて叱責した覚えはありません。
平日は妻も飲み会や接待があり、そういった場に男性が同席するのは当たり前のことと、いままで不安に思ったことはなかったのですが、その中の一人と不倫関係に陥ったようです。
特に証拠がある訳でもありませんが、妻に離婚を切り出され、話をしているうちにそういったことがなんとなくわかってきました。
私が離婚に応じないため、妻は言葉のDVによる離婚調停を言い出しました。誓って言いますが、暴力はもちろん、言葉によるDVもした覚えはありません。完全にDV冤罪を演出しています。浮気相手と再婚するために何が何でも離婚したいのだと思います。
妻の両親にもDVのことをなじられ、納得できない私は、逆にDV冤罪を主訴とした民事で名誉毀損を訴えようかと思います。
ただ、DV冤罪はしてもいないことをしていないと主張するため、証拠などが集められません。
民事で名誉毀損裁判に勝つには、どのようなことをすればよいのでしょうか。
法律相談をお願いします。弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 上野 一成
DV冤罪に対して、民事訴訟により名誉毀損に基づく損害賠償等の請求(民法第709条、第723条)が認められる可能性はあります。
名誉毀損に基づき損害賠償請求等をする場合、①被告が原告の社会的評価を低下させるような事実の流布をしたこと、②①についての故意又は過失、③①により原告の社会的評価が低下する危険が発生したこと、④損害の発生及び額、⑤③と④の因果関係(原告の社会的評価が低下する危険が発生したことにより当該金額分の損害が発生したこと)を証明する必要があります。
不法行為に基づく損害賠償請求訴訟では、当事者間の権利義務関係が明確に定められている契約関係を前提としていないため、損害を主張する原告側に立証責任があります。そこで、相談者様としては①②③④⑤を立証するための証拠を収集する必要があるものと考えられます。
①については刑法の名誉棄損罪の構成要件要素である「公然性」と同様に、不特定または多数の人が知りうる状態になるようその事実を広めたということの証拠が必要です。具体的には奥様のSNSアカウント(実名アカウントのほうがより公然性を肯定しやすくなりますが、匿名アカウントも含まれます)の投稿などです。ただし、仮に相談者様にモラハラされている等の事実を伝えた相手が不倫相手や実家の家族など周囲の一部の人に限られていた場合は、それらの一部の人に嘘を言ったということを証明することができても「不特定または多数の人が知りうる状態になるようその事実を広めた」とはいえないことになります。
②については、本件では「故意」すなわち意図的に相談者様の社会的評価を低下させるような事実を広めようとしたということの証拠が必要になります。ここで、不倫の証拠となるものを提示して、不倫相手と再婚したいから故意に言葉の暴力をでっちあげた旨の主張をすることで「故意」を立証することが可能になると考えられます。
③については、たとえばTwitterで「夫に~~などと暴言を吐かれた」のような虚偽の内容のツイートをされて、いいねやリツイート、コメントなどがついていた等のように「その事実に対してそのSNSの他のユーザーからの反応があった」ことを提示することが必要と考えられます。
④損害の発生及び額については、たとえばそのような冤罪DVの事実を広められた後に相談者様が仕事で取引をストップされたり依頼者から契約を取り消されたり等の、金銭に換算可能な不利益を受けた場合はその事実の証拠となるものを提示することが必要となります。
⑤(原告の社会的評価が低下する危険が発生したことにより当該金額分の損害が発生したこと)については、④のような損害が明らかに冤罪DVの事実を広められた後に発生していること、少なくともその一部で「相談者様が奥様にモラハラしていることを知って、その取引相手と相談者様との信頼関係が損なわれた」ことを理由としていたことの証拠となるものが必要になると考えられます。
なお、民事上の名誉棄損も刑法の名誉棄損行為と同様、摘示した事実が虚偽であるか真実であるかは問題となりません。本件の場合はDVが冤罪であれば「夫の言葉の暴力があった」ことは虚偽ということになりますが、虚偽でなかったとしてもその事実を不特定または多数の人が知りうる状態にしたことで相談者様の社会的評価が低下する危険が生じるので、冤罪であるか否かにかかわらず相談者様の名誉が毀損される可能性があるというこということになります。従って相談者様が、DVに該当するような精神的な暴力行為は行っていないということを証明する必要は無いものと考えられます。名誉棄損の事実の立証にはかなり厳密な証拠が求められるため、証拠の収集方法などを弁護士にご相談頂ければと思います。

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弁護士 上野 一成
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