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ご相談事例
夫からのDVで結婚生活が破綻しているがどうすればよいか

2023/06/20更新

女性・ 20歳代以下

・子供有り

・結婚歴1~5年
20代、女性です。夫から家庭内暴力、いわゆるDVを受けており結婚生活は破綻しているので、現在離婚を考えています。子どもは息子が一人、9か月です。
夫は結婚前から自分の思い通りにいかないと癇癪を起こして手が付けられなくなるような人でした。普段から仕事が忙しく、家のことは一切何もしません。小さい子どもがいるので家事が予定通りいかず遅れがちになるのですが、それが気に入らないらしく物に当たったりひどいときには直接こちらに怒りの矛先が向くこともあります。給料の管理は私がしているのですが、毎月夫に渡す額が少ないのが気に入らないらしく鞄を投げたりするので怖いです。
夫のDVが原因で結婚生活が破綻してしまっているので、離婚するにあたり息子の養育費や慰謝料なども取れればと思っています。親権はもちろんこちらが取りたいです。しかし、離婚にあたっての手順などどのように事を進めればよいのかわからず悩んでいます。弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 上野 一成
離婚をする場合、夫婦双方の合意により協議事項を定める協議離婚(民法第763条)によることが可能です。協議事項としては未成年の子供がいる場合の養育費・親権者の定め・面会交流等の子の監護に関する事項(民法第766条1項)、財産分与(民法第768条1項)、慰謝料(民法第710条:相手方が有責不法な行為を行った事実がある場合に限られます)等があります。一方が離婚を拒否したり協議事項の一部またはすべてについて合意が成立しなかった場合には一方が家庭裁判所に家事調停(家事事件手続法第255条1項:夫婦関係調整調停)を申し立てて調停により協議事項を定めることになります。調停は夫婦が直接話し合う形ではなく、別々の時間帯にそれぞれが調停室で調停委員に対して主張を行う形で進められます。ただし裁判所内で顔を合わせる可能性がゼロではないため、もし一瞬遭遇しただけでも危害を受けるおそれがある場合は調停申立て時に裁判所に申し出ることにより調停期日や調停室を別々にする等の配慮をしてもらうことが可能です。また、調停で離婚原因や慰謝料請求する理由を述べる際にDVを受けていたことを主張するにあたり証拠を提示することができますが、訴訟で求められるような厳密な証拠は必要とされていません。双方の主張をもとに調停委員が作成した調停案に対して合意が成立すれば調停が成立します。作成された調停調書は確定判決と同一の効力を持つので(家事事件手続法第268条1項)、慰謝料や養育費の支払い及び金額が定められた場合は強制力を持つことになります。離婚することそのものについては合意に達したものの協議事項の一部またはすべてに対して合意が成立しない場合、裁判官が適切と認めたときは同一の家裁で調停に代わる審判手続(家事事件手続法第284条1項)に移行します。審判手続では裁判官が当事者の主張にできるだけ沿う形で協議事項を定めます。協議事項について定めた審判事項の通知を受けてから2週間以内に当事者が異議申立てを行わなければ審判は確定し(家事事件手続法第287条1項)調停が成立したときと同じ効力が発生しますが、2週間以内に異議申立てを行った場合審判事項が無効になります(家事事件手続法第286条5項)。このため、審判手続が利用される頻度は高くありません。ご主人が離婚を拒否し続けている場合や、審判手続に移行しなかった場合は相談者様が同一の家裁に離婚の訴え(民法第770条)を提起して裁判で離婚請求・慰謝料請求その他協議事項についての主張を行うことになります。裁判で離婚請求するためには民法第770条1項1~5号に述べられた法定離婚事由のいずれかに該当することを主張する必要があります。本件ではDVを受けて婚姻生活が修復しえないほどに破綻しているとして、民法第770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」を主張することができます。また、法定離婚事由及び慰謝料請求の根拠としての暴力行為の事実について、原告となる相談者様が立証する必要があります。慰謝料の認否や認められる金額等はこの立証活動に左右されるので、以下のような証拠を揃えることが必要となります:①暴力行為による負傷部位の写真(被害者本人のものと判別できるよう、顔を撮影範囲に収めて下さい) ②負傷部位の治療のために受診した医療機関の医師の診断書 ③暴力行為や暴言の場面の動画や音声 ④暴力行為や暴言のあった日時や場所、状況を記録した日記や手帳 ⑤心療内科等の診断書 ⑥配偶者暴力相談支援センター(DV相談支援センター)かつ/または警察署(生活安全課)での相談記録
親権については、調停が成立しなかった場合は上記の審判手続または訴訟で裁判所が定めることになります。親権者の定めにあたっては子供の利益と福祉が最大の判断基準となります。具体的には両者の監護に関する意欲と能力、健康や生活態度、経済状態や教育環境、子供に対する愛情の度合い、再婚の可能性、子供の年齢や意思などが考慮されます。親権・面会交流については子供が15歳以上である場合は審判の際に必ず子供本人の意見を聞く必要があり(家事事件手続法第152条2項)、また実務上、10歳以上の子供についても調停・審判で子供の意見を聞くことになっています。本件ではお子様が乳児であることから、本人が言葉で意見を発することはできない段階ですが、子供が幼少である場合は母親のほうに親権が認められやすい傾向にあります。
なお、慰謝料・財産分与・養育費の請求は離婚成立(役所の戸籍かで離婚届が受理された日)から2年以内に調停を申し立てて請求することも可能です。この期間に請求を行わなかった場合、慰謝料については離婚届が受理された日から3年(民法第724条1項)で消滅時効にかかるほか、財産分与と養育費の請求は2年が経過すると調停申立てができなくなります。
離婚手続上の必要もありますが、DV相談支援センター(指定機関:県の女性相談センター等)では相談・カウンセリングほか、緊急時の一時保護やDV防止法第10条に基づく裁判所の保護命令についての情報提供、別居・離婚後の自立に向けた様々な支援を行っているので相談者様におかれましてはまずDV相談支援センターに相談に行かれることをお勧めします。多くのDV相談支援センターでは電話相談を24時間受け付けているので、先に電話で相談されてもよいと思います。証拠収集や調停での主張方法等、離婚手続の進め方について弁護士にご相談頂ければと思います。

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TEL:03-3463-5551

 

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