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DV夫に知られることなく離婚裁判を開くにはどうすればいいのか

2022/06/22更新

女性・ 30歳代

・子供無し

・結婚歴1~5年
私は35歳、現在、あることが原因で夫と別れて暮らしている女性です。
「あること」とは実は夫によるDVが原因で別居中です。本来であれば、離婚調停をして、一人静かに暮らしていければいいのですが、離婚調停を起こしたときに私の居場所が夫に知られるのが怖いのです。ですから現在の「別居」という形を取らざるを得ません。現在はDV防止法に基づいた行政保護を頼り、ある保護シェルターで生活しています。ここには私のような悩みを抱えた女性が、共に生活しています。私と同じように離婚調停に踏み切れない方もいます。
私のように行政保護を受けた女性が夫に知られることなく離婚裁判を開くには、どうすれば良いのでしょうか。それとも、裁判には私の所在地を夫に知られることがないのでしょうか。またもし所在を知られた際、どのような措置をとれば良いのでしょうか。このまま中途半端にしておけませんし、良い知恵があれば教えて欲しいです。弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 上野 一成
離婚の手続きについては、本件のような場合は相談者様が家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停:家事事件手続法第255条1項)を申立て、調停委員を介して別々の時間帯にそれぞれの主張を行い、調停委員が作成した調停案に双方が合意すれば離婚が成立します。合意に達しなかった場合は調停不成立となり相談者様が離婚の訴え(民法第770条)を提起して裁判で離婚請求することになります。なお、調停の場で相手方と面会することはありません。ただし、裁判所内で遭遇する可能性はゼロではないので、一瞬遭遇しただけでも危害を加えられるおそれがあるような場合は調停申立て時に裁判所にその旨申し出れば、調停室や期日を別々にしてもらうことが可能です。調停を申し立てる裁判所は相手方の住居のある市町村を管轄する家庭裁判所であるため、相談者様の所在地域を推測されるおそれがない一方、現在の相談者様の所在地から遠方となり負担が大きい場合は、当該家庭裁判所に申し出れば電話による調停参加が認められる可能性があります。DV防止法に基づく行政保護を受けている方の離婚調停ないし離婚訴訟については、DV防止法第10条1項に基づく地方裁判所の保護命令を得ていれば、申立人/原告の住所を秘匿して家庭裁判所で手続を執ることができます。保護命令を得ていない場合でも、裁判所に住所を秘匿して手続を執らなければならない事情を説明した文書を提出することで、住所秘匿での法的手続を開始することが可能になる場合があります。(伺う限りでは配偶者暴力相談支援センターに既にご相談されていて保護命令の申立ては未だされていないと推測されますので、その前提で説明させて頂きます。)
DV防止法に基づいて保護を受けている方に対しては配偶者暴力支援相談センターと警察署が連携して引き続き対応してくれますが、保護命令が発令されれば加害者に対して6か月間被害者の住居や勤務先を訪れたり周辺を徘徊することが禁止されます。これに違反した場合は検挙され、1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑を科されるので強制力があり、相談者様の当面の間の身体の安全は確保されるといえます。また、申立人以外の者による保護命令申立ての取下げはできません。保護命令は効力が強いこともあり、申立ての際に提出する書類が何種類かあることと、申立てから保護命令発令まで10日程度かかるため、相手に所在を知られないうちにできるだけ早く保護命令申立てをされることをお勧めします。申立てに必要な書類としては以下のものがあります:①保護命令申立書(裁判所のホームページからダウンロードできるほか、地方裁判所にも用紙があります。)この申立書に、配偶者暴力支援センターまたは警察署での相談内容を記載して下さい。また、住所については現時点での保護シェルターの住所ではなく、住民票上の住所や相手方と同居していた時点での住所を記載することができます。②申立て手数料の収入印紙1,000円分、郵便切手2,300円分 ③申立人と相手方が法律上または事実上の夫婦であることを証明する資料(添付書類として1部):戸籍謄本、住民票等→相談者様本人が役所に行くことが危険な場合は、マイナンバーカードを所持していれば住民票についてはコンビニで受け取ることができます。また、委任状を作成すればシェルターの管理者の方等、可能な方に依頼して代理で住民票や戸籍謄本を取得してもらうこともできます。 ④申立人と相手方が生活の本拠を共にしている(していた)ことを証明する資料(証拠書類として2部必要:申立人及び相手方の住民票、夫婦間でやりとりしたメール等の写し、建物登記事項証明書または賃貸借契約書の写し、電気料金・水道料金・電話料金の支払い請求書の写し、本人や第三者の陳述書等 ⑤暴力を受けたことを証明する資料 (証拠書類として2部:診断書、受傷部位の写真、本人や第三者の陳述書等 ⑥相手方から今後身体的暴力を振るわれて生命身体に重大な危害を受けるおそれが大きいことを証明する資料(証拠書類として2部:本人や第三者の陳述書、脅迫等の事実がわかるメール等の写し等。これらを準備して、現在生活されている保護シェルターの所在都道府県内の地方裁判所に連絡し、来庁予定を告げたうえでその日時に申立てに行きます。申立てと同時に裁判官による2~3時間程度の面接があります。面接後1週間後くらいに相手方の意見聴取のための審尋が行われますが、この審尋に被害者が出席する必要はありません。裁判所は相手方の言い分を確認した上で証拠に照らして保護命令を発令すべきかを判断します。保護命令が出されると発令した裁判所も申立人の身体の安全のために警備体制をとってくれます。それでも尚配偶者からの更なる暴力により生命または身体に重大な危機を受けるおそれが大きいような場合には、保護命令の再度の申立をすること等が考えられます。所在地を知られることなく確実に保護命令を受け、離婚調停の申立てを行うことができるよう弁護士にご相談下さい。
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