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ご相談事例
DVを二度と行わない旨誓約書もらった。再度DVで慰謝料請求できるか

2022/06/05更新

女性・ 20歳代以下

・子供無し

・結婚歴1~5年
こんにちは。よくわからなくなってきました、助けてください。
私は、旦那からDVを受けたことがあります。過去に何度か受け、その都度旦那は謝ってきていました。今度こそ大丈夫だ、と思っていても、だんだん行いがエスカレートしてきたように感じ、先日またDVを受けてしまった際に、話し合いの上、旦那に誓約書を作成してもらいました。旦那の言い分では、本当は私に酷い言葉を投げかけたくないし、手をあげたくもない、でも頭に血がのぼってしまったり、イライラしてしまうと、自分の衝動を抑えられない、とのことでした。なので、誓約書はきちんと書いてくれたました。その内容は、次に手をあげたら慰謝料を払ってもらうという文面になっています。これは、この誓約書の効果はいかなるものになるのでしょう。
次にDVを受けることがあったら、弁護士先生の元に相談に行き、本当に慰謝料をもらうことが可能な文面なのでしょうか。弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 上野 一成
DVに関する誓約書を作成した場合、その誓約書は誓約書の内容について合意したことを証明する証拠となり得ます。さらに、誓約書に誓約者本人の署名とその者の印章による押印がある場合には、当該誓約書が真正に成立したものと推定されることになります。また誓約書の内容に関しては、その内容が公序良俗に反するなど法律上認められないものでなければ有効なものとなります。
ただ、誓約書があるとしてもこの内容自体に調停証書や確定判決文のような強制力があるわけではありません。仮に再度暴力行為や人格を否定するような暴言があった場合、この誓約書が存在していることをもって慰謝料を相談者様自身が定めてその金額分の給与債権を差し押さえたりすることは弁護士によっても行うことはできません。ご主人が任意に支払った場合はその支払は有効になりますが、その内容となっている慰謝料を支払わないと言っている場合には、離婚手続の中で慰謝料を請求するか、不法行為に基づく慰謝料(民法第710条)を期限を定めて請求する内容証明郵便を送り、支払われなければ民事訴訟を提起することになります。また、仮に再度行われた身体的暴力行為によって相談者様が通院治療を要するような怪我をした場合は傷害事件(刑法第204条)として警察に被害届を出して過去にも何度か暴力を受けていた等の事情を話し、ご主人を被疑者として検挙すなわち逮捕(刑事訴訟法第199条)または書類送検(刑訴法第246条)を行ってもらい、被疑者側の弁護士と示談交渉して示談金の中に慰謝料を含めてもらうということも方法としては可能です。ただしこの方法は本来起こってほしくない事態の下で行うものであること、またご主人側が示談交渉を申し入れてくるような状況では民事訴訟で慰謝料を請求するよりも迅速に慰謝料支払いを受けられるものの、数日で治る程度の怪我では警察に検挙されない、あるいは即時に釈放される可能性が高いということもあり現時点からみて確実な方法ともいえません。
DVの加害者によくみられる特徴の1つとして、暴力行為を行った後で謝ったり優しく接したりして被害者が気を許したところでまた暴力をふるうということがあります。被害者としては加害配偶者を許したい気持ちが残るためにすぐに別居したり離婚話をしたりすることを躊躇しがちになります。しかし、本件のように「頭に血が上ったりイライラすると自分の衝動を抑えられない」という性向を持つご主人と婚姻生活を継続していた場合、次に暴力を受けた時には生命に危険が及ぶ可能性もあります。この状況を考えると、慰謝料請求を行う手段として現実的には家庭裁判所に夫婦関係調整調停(家事事件手続法第255条1項)を申し立てて調停手続きでDV行為の事実を主張することが適切と考えられます。調停は当事者が直接話し合うのではなく、第三者である家庭裁判所の調停委員を介した当事者の主張のやりとりで合意を探る形で行われます。離婚調停は正式名称が夫婦関係調整調停とされているように、調停を申し立てたからといって必ず離婚請求し続けなければならないわけではありません。双方が同意すれば結論として離婚ともに慰謝料支払義務を調停調書に記載した調停を成立させることも、離婚せずに慰謝料の支払いだけしてもらうという調停を成立させることも可能です。いずれの場合も裁判所が発行する調停調書(家事事件手続法第268条1項)には確定判決と同一の効力があるので、もし支払われなかった場合は民事執行法に基づく強制執行(民事執行法第151条による給与債権の差押え等)が可能です。なお、現時点で離婚を希望される場合も、迷われているあるいは希望されない場合も、相談者様の身体の安全のため、配偶者暴力相談支援センター(自治体の女性相談センター等)に相談に行かれることをお勧めします。また、DVの被害を防ぎ慰謝料の支払いを受けることを可能にするため弁護士にご相談頂ければと思います。
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