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ご相談事例
DV冤罪問題についてご相談させてください

2022/05/24更新

男性・ 40歳代

・子供有り

・結婚歴6~10年
DV冤罪について悩んでいる40代の男性です。
先日結婚して15年になる30代後半の妻が弁護士を通じて離婚調停を起こしてきました。妻は1週間前に何も言わずに中学生の子供2人を連れて家を出て行ってしまっており、妻の実家に戻っているようですが何度連絡しても妻の両親に叱責されるばかりで取り次いでくれませんでした。そして昨日私のDVが原因で離婚したいという内容証明が送られてきました。
離婚原因であるDVについては全く心当たりが無く、喧嘩や言い合いになったことはあったものの妻や子供に手をあげたことは一度もありません。また物を壊したり壁を殴ったりといった行為も行ったことがありません。そのため何故妻がDVが原因で離婚したいと言っているのか全くわかりません。そこで離婚については了承するもののDV冤罪についての無実を証明し、妻を名誉毀損で告訴したいのですがどのような手続を行えばよいでしょうか。また慰謝料をとりたいのですがどの程度とれるでしょうか。弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 上野 一成
告訴(刑事訴訟法第230条)は、犯罪の被害者や、被害者が未成年者である場合のその法定代理人などの告訴権者が検察官又は司法警察員に対して、書面または口頭で犯罪事実を申告して犯人に対して処罰を求める意思表示をすることです。口頭で行う場合には、警察官または検察官の面前で行うことになります。書面で行う場合には告訴状を作成し提出することになります。また添付書類として、犯罪の証拠となる書類のコピー、ビデオテープ・音声テープなども必要となります(動画や音声についてはデジタルデータは加工可能であるため、犯罪行為の証拠としては旧式のテープによるほうが信用度が高くなります。)なお、告訴は犯人を知った時から6か月以内にする必要があります(刑訴法第235条)。名誉棄損罪(刑法第230条1項)の場合、告訴する相手が「公然と事実を摘示して」被害者の名誉を棄損した=他人の社会的評価を低下させたという事実の存在が必要で、証拠もこれを立証するものが求められます。告訴自体は受理されたとしても、警察が被疑者を送検して起訴し、有罪判決が下されるか否かとなると主に問題となるのは「公然性」と「事実の摘示」があったといえるか、そしてそれらを検察官が立証できるような証拠を得られるか否かです。「公然性がある」とは不特定または多数が知りうる状態にあることをいいます。従って現在では通常、その事実マスメディアやSNSで公表されている状態であることが必要になります。限られた周囲の人が知りうる状態である場合は公然性があるとはいえないことになります。「事実を摘示」とは、具体的な事実を示すことです。(事実が真実であるか虚偽であるかは問題となりません。)たとえば「(相談者様が)妻や子供に対して暴力をふるったり、物を壊したり壁を殴ったりしている」という内容の文章や音声であれば、それが虚偽であったとしても具体的な事実を示したことになります。また、ある表現が他人の社会的評価を低下させたといえるためには、判例上「一般読者の普通の注意と読み方」を基準に判断されます。また、その表現が誰のことを指しているか、対象人物が特定可能である(同定可能性)ことが必要とされます。本件の場合は「妻や子供に対して暴力をふるっていること」を中心とする文章や音声が一般人の普通の注意力や読み方に照らして社会的評価を低下させるものであるといえます。また、その事実を知った人にとっては誰の行為を指しているかは明らかであることから同定可能性も認められます。従って本件ではそのような文章や音声が残されていれば事実の摘示及び社会的評価を低下させたことを認めることができますが、そのような事実が奥様の両親や双方の周囲の人にそのことが知られたという程度では公然性は認められないことになります。そのため、名誉棄損罪で告訴しても書類送検されないか、不起訴処分(刑訴法第247条)になる可能性が高いです。
慰謝料(民法第710条)は不法行為によって被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償金を意味します。従って離婚に伴う慰謝料請求が認められるためには、相手方が有責不法な行為を行っていることが必要となります。そこで本件の奥様が虚偽のDVの事実を吹聴したことが民法上の名誉棄損(民法第724条)に該当するかが問題となります。判例上、民法上の名誉棄損の成立要件は刑法の名誉棄損罪よりは緩やかで、具体的事実の摘示は要求されていません。しかし民法上の名誉棄損も、認められれば慰謝料や損害賠償請求ほか謝罪広告や行為の差止請求が認められることから、判例上公然性が要件とされています。本件の場合はその後その事実がSNSで公表されていたりしない限り公然性を認めることは難しく、民法上の名誉棄損にも該当しないと考えられます。そのため、名誉棄損を理由とした慰謝料請求は認められないといえます。他方、例えば不貞行為などの疑いが生じて証拠も提出できるようであればそれを理由とした慰謝料請求は認められる可能性があります。本件では相談者様からの名誉棄損罪での刑事告訴や名誉棄損を理由とした慰謝料請求をすることはお勧めできませんが、暴力行為を行った事実が虚偽であることを立証して相手方からの慰謝料請求を認めさせないなど、離婚調停を行う上での対策を練る必要があります。相談者様にとって最善の方策を得るため、弁護士にご相談頂ければと思います。
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