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ご相談事例
DV防止法の保護命令を受けたのに夫に居場所を知られてしまいました

2023/03/29更新

女性・ 30歳代

・子供無し

・結婚歴1~5年
私は31歳、夫は34歳です。現在夫のDVが原因で離婚調停中です。
新婚時代は夫も優しかったのですが、会社をリストラされてからは人が変わってしまったように私に対して暴力によるDV行為を繰り返すようになったのです。どうすればいいかわからなくなっていた矢先に、あるTVでDV防止法の行政措置でできた保護シェルターの存在を知りました。一刻も早く夫から離れたくて、身の回りの荷物だけ抱えて、シェルターで保護してもらいました。夫に対してDV防止法の行政処置を取り、アパートを借りて静かに暮らしていたところに、また夫が来たのです。どうやって住所を調べたのかわかりません。ですがこれは法律としては非情に問題点なのではないでしょうか。私はまた逃げるようにシェルターへ行き、いきさつを説明しました。シェルターのスタッフの薦めで、私は夫から逃れるため、DVの被害届を出し、夫に対して離婚届を提出し、現在に至ります。
私が体験したことは、DV防止法の大きな問題点なのではないでしょうか。被害届を出し、夫が逮捕されなければ、私はどうなっていたかわかりません。夫が刑務所から出たとき私はどうやって身を守ればいいのでしょうか。弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 上野 一成
本件は保護命令が出されているのに加害者に住所を知られてしまったという重大な問題のある事件です。
ご主人が相談者様の住むアパートに来た時点が保護命令の接近禁止命令発令から6か月以内であれば、保護命令違反の行為を行ったことになります(DV防止法第29条)。現時点で起訴されていたとすると、おそらく有罪となり1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑が科せられることになります。しかし、ご主人には禁錮以上の刑の前科がないと考えられるため、同罰則の法定刑に照らすと執行猶予がつく可能性があります(刑法第25条1項)。執行猶予になると刑務所収監などの身体拘束はなくなります。しかし裁判官の判断により保護観察処分にすることができること(刑法第25条の2)及び、執行猶予期間中に再び相談者様に近づいたり、相談者様に対して脅迫的な内容の電話やメール送信を行ったりすると(この場合は保護命令の期間内か否かは問われません)裁判官の判断で執行猶予が取り消されるため(執行猶予の裁量的取消:刑法第26条の2)、執行猶予付き判決が出ても相談者様の身体に危険が及ぶ可能性は低いと思われます。保護観察処分がつけられた場合は、個別に遵守事項が定められます。DV防止法の保護命令違反の場合は、保護命令の期間経過の如何を問わず接近禁止命令をはじめとする保護命令の内容と同様の遵守事項が科せられる可能性が高いです。執行猶予期間は1年以上5年以下ですが、同法違反で執行猶予がついた場合はその期間が長くなる可能性が高いです。なお、保護命令違反と仮定される本件の刑事事件において、検察官から被害者等通知制度について説明があると思いますが、相談者様に通知制度利用の意思を確認した上で、加害者の刑の執行終了予定時期や仮釈放又は刑の執行終了による釈放、執行猶予期間の終了時に関する事項などの情報提供を受けることができます。
執行猶予期間経過後、あるいは実刑判決の場合は刑務所からの出所後に相談者様の現在の居場所を知られないようにするためには、住民票を移転する時点でDV防止法に基づく支援措置として住民票の移転先の役所に対して加害者からの住民票の写しなどの請求を拒否するように求めることができます。この場合、警察署や配偶者暴力相談支援センターへの再度の相談が必要となります。なお、最初にシェルターに避難された時点から住民票を移していなかったのにご主人に所在が知られてしまった場合など、住民票の非開示措置をとってもなお危険がある場合は、警察に相談してストーカー規制法に基づく警告(ストーカー規制法第4条)を出してもらうことが可能です。警告を出してもなお同様の行為を繰り返すおそれがあるときは、被害者の申し出または警察の職権で国家公安委員会によるストーカー行為禁止命令を出してもらうことが可能です(同法第5条1項)。ストーカー行為禁止命令はDV防止法の保護命令と異なり有効期間が限定されていないため、元配偶者のつきまとい行為を防ぐには最も強力な法的手段となります。もっとも、警察官が警告等を行うと加害者を刺激することになるため、まず弁護士に依頼して「つきまといをやめなければ警察に警告を出してもらう」旨の通告を行ってもらうという方法もあります。繰り返しになりますが、本件は保護命令が出されているのに加害者に住所を知られてしまったという重大な問題のある事件です。相談者様に再び危害が及ぶことがないよう防止措置を万全に行うため弁護士に相談頂ければと思います。

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弁護士 上野 一成
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