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ご相談事例
妻のDVが原因で離婚したいです。慰謝料はもらえますか。

2023/04/05更新

男性・ 20歳代以下

・子供有り

・結婚歴1~5年
20代後半の会社員です。妻の行動はDVに当たるのではと思い、相談いたします。
昨年子供が生まれたあたりから妻の様子がおかしいのです。それまではおしとやかな良妻だったのですが、些細なことで怒る・口汚くののしる・手を出すということが増えてきました。「育児のストレスがたまっているのだろう」と思い、彼女の負担を減らそうと家事を率先してやるようにしていました。ゴミ捨て、買い物、掃除、洗濯もやっています。
会社の弁当は自分で用意していたのですが、ある朝、妻が「調理の音が煩いから弁当は作るな」と怒ってきたため、それ以来ずっと会社の食堂で食べていました。しかし、今度は「昼食代がもったいない。私は外に出られないのに贅沢をするな」とこづかいを減額されたのです。さすがにやっていけないと話し合ったのですが、キレて会話が通じません。それから週に何度かは、昼をコーヒーのみで過ごすようにしています。
このままでは離婚だろうかと考えていた矢先、妻の勘違いを、私がそれとなく指摘したら激昂し、口論になりました。ヒートアップした妻は熱いコーヒーの入ったマグカップを私に投げつけ、私は手と頬に火傷を負いました。彼女の行動はDVに当たり、離婚は可能ですよね。慰謝料を払ってでも離婚したいのです。娘の親権をとりたいですし、親権さえ取れれば慰謝料もいらないです。親権を取るにはどう動けばいいのか、教えて下さい。
弁護士の法律相談希望です。
▼ 回答します
弁護士 上野 一成
①離婚の可否について:配偶者からの暴力及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)第1条が定義する「配偶者からの暴力」には身体的暴力に加えて、身体的暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為も含まれます。これには精神的暴力・社会的暴力・経済的暴力も含まれるとされます。精神的暴力とは暴言を吐くなどわざと心を傷つける行為のことをいい、社会的暴力とは携帯電話やメール・SNSの交信履歴をチェックする、外出を制限する等行動を監視することをいい、経済的暴力とはお金を取り上げる、生活費を渡さない等経済的に困窮させる行為をいいます。
本件の奥様の手を出す、熱いコーヒーの入ったマグカップを投げつけるといった行為は身体的暴力に当たるといえます。特にマグカップを投げつける行為は傷害罪(刑法第204条)に該当しうる行為です。また、些細なことで怒る、口汚く罵るといった行為はそれが繰り返し行われていれば精神的暴力に当たる可能性があります。そして、昼食を満足に食べられないほどにお小遣いを減額したことについては、それが1回や2回ではなく継続しているとすれば経済的暴力に当たる可能性があります。これらのDVによって婚姻生活を続けていくことが困難であるといえる状況であれば、最終手段である離婚の訴え(民法第770条1項)に必要となる法定離婚事由の1つ「婚姻を継続しがたい重大な事由」(同条1項5号)にあたり離婚が認められると思われます。その場合には、奥様が暴力行為という有責不法な行為を行っていることから慰謝料請求(民法第710条)も認められると考えられます。
②娘さんの親権について:両親の話し合いにより決定することができますが(民法第766条1項)、決まらなければ家庭裁判所の調停・審判手続によることになります。調停(家事事件手続法第255条1項)においては裁判官が親権を定めるのではなく、当事者のそれぞれの主張をもとに調停委員が助言を行いながら調停案を作成して合意を探る方式で行われます。調停で親権及びその他の協議事項で合意に至らなかった場合で裁判官が審判によることが適切と判断したときは審判手続(家事事件手続法第284条1項)に移行します。審判手続では当事者の主張は行われませんが、調停での当事者の主張にできるだけ沿う形で裁判官が協議事項を決定します。審判に際しての親権の判断にあたっては、子供の利益と福祉が最大の判断基準となります。具体的には、両者の監護に関する意欲と能力、健康や生活態度、経済状態や教育環境、子供に対する愛情の度合等が考慮されます。相談者様としては調停の段階で母親が子供の成育環境を整えられないこと、子供に悪影響を与えるおそれがあること、父親が子供の成育環境を整えられることなどが証明できるように準備しておくことが大事であると考えられます。裁判所から審判事項証明書を受け取ってから2週間以内に当事者が異議を申立てなければ審判事項は確定しますが、どちらかが異議を申し立てると審判は無効になってしまいます(家事事件手続法第286条5項)。審判が無効になった場合、あるいは調停不成立後審判手続が行われない場合は相談者様が離婚の訴えを提起することになります。訴訟では、上記の婚姻を継続しがたい重大な事由と慰謝料請求の根拠となる配偶者の身体的・精神的暴力行為の事実を主張立証するとともに、親権を父親に定めるべき旨の主張立証も行う必要があります。親権に関しては、相手方が親権者に適しないことよりも、相談者様が親権者にふさわしいことを強調するほうが主張立証を行いやすいと考えられます。
父親が親権者となるケースは大体2割程度となっており、お子様が乳幼児である場合は基本的に母親が親権者に定められるため、監護者(実際に子供と同居して世話や教育を行う親)を母親に定める場合を除けば相談者様が親権者に定められる可能性は高いとはいえません。ただし本件の事情に照らすと相談者様の主張立証しだいで認められる可能性があるので、離婚請求・慰謝料請求とあわせて認められるための交渉方法について等弁護士にご相談頂ければと思います。

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弁護士 上野 一成
TEL:03-3463-5551

 

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