我々弁護士が離婚問題の相談を受ける際、DVについての相談を受けることがよくあります。その中でも「DV保護命令を申し立てるにはどのようにしたらいいのか」とご質問を頂くことがあります。
そこで、DV保護命令について弁護士が解説します。保護命令とは、配偶者や生活の本拠を共にする交際相手からの身体に対する暴力を防ぐため、被害者の申立てにより、裁判所が加害者に対し、被害者へのつきまとい等をしてはならないこと等を命ずる命令です。夫婦関係継続中に身体に対する暴力(性的暴力・精神的暴力はこれに含まれません。)又は生命・身体に対する脅迫を受けた被害者が、今後、身体に対する暴力を振るわれて生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに申し立てることができます。
しかし、暴力等を受けた後に離婚した場合は、以前に受けた暴力等を基に申立てることができますが、離婚した後に受けた暴力等を基に保護命令を申立てることはできません。
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)第10条に基づく裁判所の保護命令は、5つの種類があります。
① 接見禁止命令
加害者が被害者の身辺につきまとったり、被害者住居(加害者と同居する住居は除く)や勤務先等の付近を徘徊することを禁止する命令
期間:6ヶ月間
②子への接見禁止命令
加害者が子を幼稚園などから連れ去る疑いがあり、それによって被害者が加害者に面会せざるを得なくなる状況になることを防ぐ必要がある場合に、子の身辺につきまとったり住居や保育施設、学校等その子が通常いる場所の付近を徘徊することを禁止する命令。単独で求めることはできず、①の被害者に対する接近禁止命令が同時に出る場合か、既に出ている場合に発令されます。
期間:6ヶ月間
③退去命令
申立人と相手方とが同居している場合で、申立人が同居する住居から引越しをする準備等のために、相手方に対して、家から出ていくことを命じ、かつ同期間その家の付近をうろつくことを禁止する命令。
期間:2ヶ月間
④親族等への接近禁止命令
加害者が被害者の実家など、密接な関係にある親族等の住居におしかけて暴れるなど、それによって被害者が加害者に面会せざるをえなくなる状況を防ぐため必要があると認められるときに、その親族等の身辺につきまとったり、住居や勤務先等の付近をうろつくことを禁止する命令。単独で求めることはできず、①の被害者に対する接近禁止命令が同時に出る場合か、既に出ている場合に発令されます。
期間:6ヶ月間
⑤電話等禁止命令
面会を要求すること・監視カメラを設置するなどその行動を監視していると思わせるような事項を告げ、またはその知りうる状態に置くこと・無言電話をかけたり電話やFAX・メールを連続送信すること・汚物や動物の死体などの著しく不快・嫌悪の感情を催させる物を送付し、またはその知りうる状態に置くこと・性的羞恥心を害するような事項を告げ、またはその知りうる状態に置くことなどの8つの行為をいずれも禁止する命令
期間:6ヶ月間
1 DVセンターまたは警察に相談
保護命令を申し立てるには、事前に配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)、または、警察署に相談に行っておく必要があります。両者はDV防止法に基づき連携しています。
保護命令の申立書には、同法に基づきDVセンターに指定された機関(県の女性相談センターなど)、または警察署(生活安全課等)等の相談機関へ赴いて相手方からの暴力を受けたことなどについて相談した事実を記載する必要があります。
事前に相談をしていないときは、公証役場において相手方から暴力を受けたことなどについての申立人の供述を記載し、その供述が真実であることを公証人の面前で宣誓して作成した宣誓供述書を保護命令の申立書に添付する必要があります。認証を受けるには、11,000円が必要となります。
また、子への接近禁止命令又は親族への接近禁止命令を求める場合、相談又は宣誓の段階でこれらの命令が必要と考えられる事情についても申述しておく必要があります。
前記の機関に相談をしておらず、宣誓供述書の添付もないと、申立てをしても保護命令が発令されないことになりますので、注意してください。
2 DVの証拠を集める
保護命令の申立書には、
①DVを受けていたことを証明する資料や、
②相手方から今後身体的暴力を振るわれて生命、身体に重大な危害を受けるおそれが大きいことを証明する資料
を添付する必要があります。
そのため、①病院の診断書、怪我をした部位の写真、②相手方からのメール、LINE等を残しておきましょう。
保護命令の申立て時は、しばしば状況が切迫していることから、離婚訴訟の証明資料ほどの厳密さは求められませんが、脅迫的な内容のメールやLINEトーク画面などは残すようにしておいて下さい。
保護命令が発令されるように申し立てをするためには、事前準備や、証拠等を集めておく必要があります。申立てをしても保護命令が発令されないことにならないようDV問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。
1 申立てに必要な書類
保護命令の申立てには、下記の資料が必要となります。
(a)配偶者暴力支援センターまたは警察署の相談記録
(b)手数料の収入印紙1,000円と郵便切手2,300円分
(c)申立人と相手方が法律上または事実上の夫婦であることを証明する資料(双方の戸籍謄本または住民票など)
(d)申立人と相手方が生活の本拠を共にすることを証明する資料((c)で双方の住民票があれば足りるほか、建物の登記事項証明書または賃貸借契約書の写し・公共料金の請求書の写し等)
(e)DVを受けていたことを証明する資料
(f)相手方から今後身体的暴力を振るわれて生命、身体に重大な危害を受けるおそれが大きいことを証明する資料
なお、相手方に申立書、主張書面及び書証の写し、宣誓供述書の写し等を送付することになるので、相手方に秘密にしている連絡先(避難先)の記載が送付書類にないかどうか、十分に確認した上で裁判所に書類を提出してください。
2 管轄裁判所
申し立てる裁判所は申立人(被害者)または相手方(加害者)の住所のある市町村を管轄する地方裁判所、または暴力行為が行われた場所のある市町村を管轄する地裁となります。家庭裁判所ではないので注意して下さい。
3 申立後~保護命令の発令
申立人の面接の終了後、通常、1週間後くらいに相手方の意見聴取のための審尋期日が設けられます。相手方の審尋期日には申立人が出席する必要はありません。裁判所は、相手方の言い分を確認し、証拠に照らして保護命令を発令するかどうかを決めます。早ければ、相手方の出頭した審尋期日に保護命令が言い渡されます。
ただし、緊急を要する場合(身体や生命に危険がある場合等)は、上記期日を経ないで、保護命令を発令することがあります。
4 罰金
保護命令が発令した後、相手方が保護命令に違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
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