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離婚問題テーマ別解説
~子供の面会交流をどうするか?

我々弁護士が離婚問題の相談を受ける際、子供のいる方からの離婚相談で、「子供の面会交流はどのように取り決めるの?」、「子供の面会交流を拒否された(拒否したい)」、「面会交流の調停申立について教えて」など、子供の面会交流についての相談が非常に多いです。このように、ウカイ&パートナーズ法律事務所では、離婚に関連して子供の面会交流についてのご質問を頻繁に頂いています。そこで、本記事では、主に夫婦が離婚する場合の面会交流の方法、面会交流に関する事項の決め方、面会交流を拒否できる場合や拒否された場合の対処方法等、子供の面会交流に関わる問題を弁護士が解説します。

そもそも、面会交流とは、未成年の子供がいる夫婦が離婚後または別居中に、別居している方の親(別居親)が未成年の子供と面会して一緒に遊んだり食事したり、あるいはメールやLINE等で連絡を取ったりすることによって定期的・継続的に交流を行うことです。家庭裁判所は原則として面会交流を認めていますが、子供と同居している親(同居親)が面会交流を拒否した・面会交流方法が折り合わない等の問題がしばしば起こります。ウカイ&パートナーズ法律事務所でも、「子供と面会交流を希望しているが同居親に拒否されている」、「別居親に面会交流調停を申立てられた」等、面会交流に関するご相談を頂くことが良くあります。

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面会交流の方法

民法第766条1項は、協議離婚(民法第763条)の際の子供の監護に関する協議の中で面会交流についても、「子の利益を最も優先して考慮」しつつ夫婦間で取り決めることができる旨定めています。離婚協議の際の面会交流に関する取り決めを行う場合に別居親と子供が面会交流を行う権利という意味で「面会交流権」という言葉が使われることがありますが、面会交流権は別居親が持つ法律上の親子関係に基づく権利であるとともに、子供が別居親とも関わりを持つことが心身の健やかな成長につながるという観点に基づく子供の権利でもあるといえます。本章では、面会交流権が別居親と子供双方の権利であるということを念頭に、どのような形で面会交流を行うことが望ましいかについて弁護士が解説します。

1 面会交流の態様

(1)面会の頻度

①配慮すべきこと

従前の対面の面会は頻度を多くしすぎると同居親と子供にストレスがかかるため、子供の年齢や生活ペース、習い事や学校関係のスケジュール、同居親の仕事等の諸事情に十分配慮して双方が継続できる頻度で設定する必要があります。なお、令和2年度(2020年)の司法統計年報によると、家庭裁判所の調停・審判手続で面会交流の取り決めを行ったケースでの面会交流の頻度は「月1回以上」が最も多く4割超となっています。これに「月2回以上」と「週1回以上」を入れると、広い意味での「月1回以上」が半数を超えています。

②面会方法の多様化(電話面会、web面会など)

また、現在は、電話のみならず、LINEのビデオ通話、スカイプやzoom等のweb面会を行う機会を設けることもあります。web面会は移動の手間や親同士が対面する必要がないことから、子供の意向次第では従来の対面の面会に加える形で頻度を増やすことができるというメリットもあります。

(2)面会の場所と面会方法

面会の場所及び方法については、子供の状況に照らして無理のない範囲で定めることになります。合意があれば、その都度協議して決めることもできます。一般的には、万一子供に危険が及ぶ可能性があることを考えると、密室を避け、人目につきやすい公共の場所にするほうが望ましいでしょう。日帰りで行けるテーマパークやショッピングモール等が適しているといえます。また、宿泊を伴う旅行は、通常、同居親の許可を得て連れて行くことになります。面会の場所や時間の長さを問わず、同居親としては、子供が自宅に帰って来ることを前提としているので、連れ去りと捉えられないためにも、同居親の許可なく旅行に行くことはできないと考えて下さい。

(3)子供が乳児である場合・複数いる場合

①乳児との面会交流

子供が乳児(おおむね3歳未満)の場合でも、家庭裁判所は面会交流を認めています。ただし、乳児の場合は保育園等の普段の状況とは違う状況で同居親から離れると不安になって泣き続けてしまうことが多く、また食事や排せつの世話に手がかかるという状態です。そのため別居親と2人きりになることは難しいので、乳児との面会交流は同居親の付き添いの下で短時間行われることが多いです。

②子供が複数いる場合

面会交流権が子供の権利でもあることから、同居親が未成年の子供を二人以上監護している場合は双方の親の同意に基づいて、年齢差や子供それぞれのスケジュール等に配慮して同時あるいは別々に面会交流を行うことができます。下の子が乳児である場合は上の子とだけ会い、上の子が受験生である場合は下の子とだけ会う等です。

(4)初回は弁護士が立ち会うことも

面会交流の頻度・場所等を定めた上で、同居親側に不安が残る場合は乳児の場合を除いて初回の面会交流に弁護士が立ち会うことも可能です。同居親本人が立ち会うこともできますが、離婚直後に親同士が居合わせることにより子供が戸惑うことや気まずくなりやすいこと等を考えると、初回は短時間の面会交流を設定して、面会交流立ち合い経験を持つ弁護士が当事者から適切な距離を保ちながら立ち会うことで同居親の不安を軽減しつつ、面会交流の様子を報告することも一つのアイデアでしょう。

2 第三者機関の面会交流支援

(1)同居親が別居親と会いたくない場合

協議や審判で面会交流の取り決めを行った場合でも、子供が別居親との面会交流を嫌がっているわけではなく面会交流自体を拒否したいわけではないが、同居親の心情的にどうしても離婚した相手と会いたくないという場合もあると思います。このように同居親と別居親との間の感情的なわだかまり等が原因で親同士だけでは面会交流の実施が困難である場合、ひとり親家庭支援を行っている自治体やNPO法人等の第三者機関の面会交流支援を利用する方法があります。例えば、FPIC(家庭問題情報センター)などは有名な面会交流の第三者機関です。

(2)自治体の第三者機関による支援の例

①所得条件を満たせば無料

自治体の第三者機関による面会交流支援は、交通費等の実費を除いて無料で受けることができます。同居親がその自治体に居住していることが条件となる他、子供の年齢制限や利用する親の双方につき所得制限があります。例えば東京都ひとり親家庭支援センター「はあと」が実施する面会交流支援の場合以下のような条件となっています。

(ア)子供が中学生以下
(イ)所得水準が双方とも児童扶養手当受給相当(子供1人の場合税込み年収約350万円)、または一方が児童扶養手当受給相当で他方が児童育成手当受給相当(同565万円)
②支援の内容

頻度については月1回・年間12回までで1年間利用可能という条件が目安となります。民間の第三者機関では父母双方の同意があれば契約更新が可能な場合があります。支援の形式としては以下のようなものがあります:

(a)付添い型: 面会交流の場に支援者が付き添う。(b)(c)を含む
(b)受け渡し型:面会交流場面には同行せず、子供の受け渡しを援助する。(c)を含む
(c)連絡調整型:双方の親に連絡を取り日時・場所等の調整を行う

どの形式にするかは支援機関と相談しながら決めますが、利用可能な期間は形式を変更することができます。初回や最初の数回は(a)を勧められることが多いです。
参照:法務省 面会交流支援団体の一覧表

3 面会交流に際して守るべきルール

面会交流が認められた場合は、定期的な交流を続けていくことができるよう、別居親と同居親それぞれについて以下のようなルールを定めて守るようにしましょう。双方の同意があれば協議書の面会交流の項目に記載することもできます。

(1)別居親が心がけること

①同居親の悪口を言わない

面会交流が認められた以上、「他方の親の悪口を言わない」ことは双方が必ず守らなければならないルールです。内容の如何を問わず同居親に対するネガティブな内容の言動は控えるべきですが、特に同居親の経済状況や子育て方針を批判するようなことを子供に対して言わないようにして下さい。

②高額なプレゼントやお小遣いを渡すことはNG

物や金銭によって好意を持たせようとすることは子供の成長の上で好ましくないため、支援を行いたい場合は親同士で相談するようにして下さい。また、プレゼントは金額の上限等につき同居親に相談して承諾を得ていれば、クリスマスと誕生日の年2回程度までは渡しても問題ないと考えられます。

③子供だけと約束をすることは避ける

例えば、事前に同居親に相談せずに突然子供に対して宿泊を伴う旅行等を持ちかけたりすると、子供本人だけでなく同居親にとっても様々な不安が生じることになります。当初の定めと違う内容の面会交流を希望する場合は必ず同居親に相談して承諾を得る必要があります。

④時刻を変更したい場合必ず同居親に連絡する

(2)同居親が心がけること

①子供の前で別居親の悪口を言わない

これは別居親が心がけることと同様ですが、別居親との過去の争いや悪口等を聞かされると、子供が別居親と会いたいと思っていても同居親に遠慮したり、別居親と接しづらくなってしまいます。悪口を言いたくなることは無理もないのですが、別居親と会うことを楽しみにしている子供の気持ちに配慮しましょう。

②「(別居親と)会いたくない」と言い出したら気持ちを聞く

子供の方から、別居親と会うことを嫌がるような言葉が出てきた場合は、会うことを遠慮する必要はないことを伝えた上で、自分の意見をはさまずに子供の気持ちだけを聞き出すことが大切です。

③面会交流でどこに行ったか・何をしたか等詳しいことを聞かない方がよい

第三者の付き添いがあった場合に第三者に報告してもらうことは問題ありませんが、同居親が子供から詳しく聞き出そうとすると干渉している印象を与え、窮屈な思いをさせることになります。もちろん、子供が楽しそうに面会交流の内容を自発的に話す場合には問題ありません。

参照:家庭裁判所「面会交流のしおり」

4 面会交流の方法で迷ったら弁護士にご相談下さい

面会交流を認める場合、その方法については子供の年齢や性別、好みや日常生活・学校生活のスケジュールを中心に細かい配慮を行った上で具体的に決める必要があります。また、子供が複数いる場合はそれぞれの年齢・スケジュール等に合わせたより細かい取り決めが必要となります。どのような方法が最適であるかは実施して初めてわかることもありますが、離婚に伴う面会交流の取り決めの経験のある弁護士に相談することによって、協議段階での不安を軽減することができます。子供の福祉にかなう面会交流の方法を策定するために、弁護士に相談することをお勧めします。離婚した当事者で連絡を取り合いたくないという方は非常に多いため、離婚した後の、面会交流の毎月の日程調整を我々弁護士に依頼する方もいます。

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面会交流の決め方

子供の別居親との面会交流権については、離婚協議の際にまず父親と母親のどちらを親権者とするかを決めてから、同居親と別居親それぞれの立場で話し合いを行うことになります。本章では離婚の際の面会交流権を定める手続について解説します。

1 面会交流権の決定時期

(1)離婚協議で合意ができれば決まる

面会交流権については、離婚の際の夫婦間でまず親権者及び監護権者を父母どちらにするか決めた上で認めるか否か、及び認める場合の実施方法を定めることになります。協議書に記載する内容については、原則として夫婦間の合意があれば有効になります。従って、「原則として月1回いずれかの日曜日に実施する。詳細についてはその都度協議して定める」というような抽象的な内容の記載にすることもできます。面会交流の定めを含めた協議事項すべてについて合意ができれば、金銭債務の発生を伴う事項(財産分与等)に強制力を持たせるために協議書を公証役場で公正証書として作成します。なお、面会交流に関する事項について強制力は生じないのですが、合意された内容は別居親と子供の権利として発生しています。従って、仮に協議離婚後に同居親が一方的に面会交流を拒否した場合には、別居親は公正証書の有無に関わらず面会交流を要求するための法的な対応を行うことができます。

(2)面会交流についての調停や審判について

①協議不成立の場合は調停を申し立てる
(a)不成立事項により調停の種類が異なる

離婚協議の際に、別居親が面会交流を求めているのに同居親が認めなかった場合、別居親は家庭裁判所に家事調停(家事事件手続法第255条1項)を申立てることができます。この点、そもそも親権者が決まっていない等、他の協議事項についても合意が成立していない場合は離婚調停、親権者の定めや他の協議事項については合意が成立していて面会交流に関してのみ合意が成立しなかった場合は面会交流調停を申立てることになります。離婚調停は離婚の際の協議不成立の場合のみ申立て可能ですが、面会交流調停は離婚時の他、離婚に至らない別居中や離婚後に面会交流に関して問題が生じた場合にも申立てることができます。

(b)調停案に合意できれば調停成立

離婚調停・面会交流調停どちらの場合も、調停手続では家庭裁判所の調停室で別々の時間帯に夫婦がそれぞれ主張を行い、それらをもとに調停委員が調停案を作成します。夫婦双方が調停案に同意すれば調停が成立します。離婚調停の場合は調停成立によって離婚が成立します(もっとも、役所への離婚届提出はどちらかが行く必要があります)。面会交流調停の場合は、成立によって協議事項が全て成立したことになるため、役所に離婚届を提出して受理されれば離婚が成立します(民法第765条)。

②調停が不成立の場合
(a)離婚調停自体が不成立の場合

離婚調停の中で面会交流の話し合いがなされていた場合は、面会交流に関する調停案に合意ができていても離婚自体の合意ができなければ調停は不成立となります。当事者で離婚の協議が整わず、離婚調停でもまとまらなかった場合には、通常、夫婦のどちらか一方が他方に対し、家庭裁判所に離婚訴訟を提起することになります(民法第770条1項)。なお、めったにありませんが、離婚について裁判所の判断で審判手続(家事事件手続法第284条1項)に移行した場合は裁判官が全ての協議事項につき職権で定めて当事者に通知します。当事者が2週間以内に異議申立てを行わなければ審判が確定して離婚が成立しますが、異議申立てを行った場合は審判が無効になります(家事事件手続法第286条5項)。

(b)面会交流調停が不成立の場合

離婚調停とは別に面会交流調停を申し立てていて、面会交流調停が不成立になった場合は、自動的に審判手続に移行します。審判後、当事者が2週間以内に異議申立てを行わなければ審判が確定し、面会交流が定められます(もしくは、認められないことになります)。 なお、同時並行で進めていた離婚調停が不成立になった場合でも、面会交流調停だけ手続きを継続したり、審判に移行することは可能です。手続上は離婚訴訟の中で面会交流につき議論することもも可能ですが、訴訟終了まで確定しないままになってしまうため、面会交流の調停を継続したり、審判に移行する方が多いです。 また、面会交流調停の途中で先に離婚だけ取り決める場合もあります。協議離婚を有効に成立させる上で必ずしも全ての協議事項が決定している必要はないので、このような場合は先に離婚届を提出して離婚を成立させてから、面会交流について改めて協議するか再度調停を申し立てることもあります (協議書の記載上は「面会交流については離婚成立後に別途協議の上定めるものとする」等とすることができます。) 。弁護士として離婚問題に携わっていると、離婚問題で争っている間は同居親が「あの人に子供を会わせたくない」と頑なな対応だったのが、離婚が成立して一区切りしたら、「子供を会わせても良い」と軟化する事例を何度も目にしました。ケースバイケースであり、例外的ではありますが、「面会交流よりもまずは離婚を先に」という事案も中にはあるでしょう。

③試行的面接

調停や審判手続の際に、面会交流の認否や方法について定める上で参考にするため、家庭裁判所内の一室で、別居親と子供とを面会させる試みがあります。これを試行的面接と言います。試行的面接には、家庭裁判所の調査官が立ち会います。調停員や同居親、双方の代理人弁護士が、別室でマジックミラー越しに面会の様子を確認することもあります。そして、別居親の子との関わり方や子供の様子などを見た上で審判では面会交流を認めるか認めないかの判断を行います。調停で試行的面接が行われた場合は、調停委員が調査官の報告をもとに面会交流を行うか、行う場合はどのような形式で実施するか等の記載を含む調停案を作成します。

2 子供の意思はどの程度反映されるか

夫婦間の協議で面会交流について定める場合は、年齢や発達状況を問わず、可能な限りで子供の意思を聞き出すようにしましょう。調停や審判で家庭裁判所が関与する場合は、前述した試行的面接を行う場合がある他、子供が15歳以上である場合は審判手続において子供の意思を聞くことが義務づけられています(家事事件手続法第152条2項)。また実務上、子供がおおむね10歳に達している場合は調停・審判ともに子供の意見を聞く機会を設けています。10歳未満の場合は意思を反映させないということはありませんが、10歳に達しているか否かで特に(裁判所が職権で面会交流の定めを行う)審判手続においては裁判官の判断材料としての子供の意思の重要度が変わるといえます。

面会交流を拒否したい・拒否されたら

前述のように、離婚時に面会交流についての話し合いで折り合いがつかなかった場合は、他の協議事項のことと併せて調停・審判・訴訟手続を利用することが可能です。しかし、一度夫婦間の協議や裁判所の関与により面会交流が認められ、方法等も定められた場合もなお同居親が面会交流を拒否することができる場合があるでしょうか。また、逆に面会交流を拒否されてしまった場合は、別居親が再び子供と会うことや連絡を取ることが認められないままになってしまうでしょうか。ウカイ&パートナーズ法律事務所でも、「離婚した時に面会交流が定められたのに相手が子供と会わせてくれない」等、離婚後の面会交流を拒否されてしまったという方からのご相談をよく頂いています。本章では、離婚後に面会交流を拒否できる場合及び、面会交流を拒否された場合の対処方法について弁護士が解説します。

1 拒否できる正当な理由がある場合

離婚時に面会交流を拒否することができる正当な理由として、以下のものがあります。

① 子供が面会交流を明確に拒絶している
② 別居親が過去に子供を身体的・精神的・性的に虐待した履歴があり、子供に危害を加えるおそれがある
③ 別居親が子供を連れ去るおそれがある

そして、離婚時に面会交流の取り決めを行った場合でも、上記に該当する事情が生じた場合は、離婚後に面会交流を拒否することができる場合があります。特に、②の事情がある場合は、面会交流自体を認めないケースが多いです。また、子供の心情は変化しやすいことから、①は中学生や高校に進学した、部活が忙しくなった、友人との交友を優先するようになった等に、生じることもあります。さらに、③については、同居親の承諾を得ないで子供を呼び出そうとした、子供の通う保育園や学校付近をうろついていた等の事実が判明した場合等が該当します。

2 面会交流を拒否されたら

面会交流権の取り決めを行った上で離婚が成立し、別居親が面会交流ルールを守っているのに、あるいは守る意思があるのに拒否された場合に別居親がとりうる手段としては、以下のようなものがあります。

(1)履行勧告

履行勧告手続きは、調停または審判で離婚ないし面会交流の定めが行われた場合に利用することができます。別居親は、家庭裁判所に履行勧告の申し出を行い、それに対し、調査官が面会交流の実施状況を調査した上で、「調停での合意通りに面会交流を実施する」旨を同居親に対して勧告することができます。履行勧告が行われた場合も強制力がないために効力としては弱いといえます。もっとも、履行勧告をしたにもかかわらず、相手方が面会交流に応じなかったことは、後の、面会交流調停や審判等で理由付けとして使われることがあります。

(2)面会交流調停申立て

また、離婚後においても、再度、面会交流調停を申立てることができます。離婚の際に定めた条件通りに面会交流を行うことができない事情が生じていることはよくあるので、同居親側から離婚後に面会交流を拒否した理由や承諾可能な条件等を聞き出した上で、別居親側が柔軟な態度を示すことにより問題が解決する可能性があります。

(3)間接強制

①金銭支払義務を課すことによる心理的強制

面会交流は、慰謝料や養育費など金銭債権の差押えのように直接的な強制執行をすることはできません。そのため、実務では、面会交流の実現を図るために、間接強制が取られております。この間接強制とは、面会交流の実現が理由なく拒絶されている場合に、裁判所が子との面会を拒絶している同居親に対して金銭支払義務を課すことにより面会交流の心理的強制を図るも執行手続きです。

上述した通り、面会交流についての取り決めは金銭支払を内容としないため、同居親が正当な理由なく拒否した場合、決定事項が公正証書や裁判所の関与を経た証書により作成されていても強制的に面会交流を実現することはできません。この点、面会交流の定めが詳細かつ具体的に決められている場合は、家庭裁判所に申し立てることにより間接強制が認められる場合があります。裁判所が間接強制を認めた場合は、裁判所が、同居親に対して、「離婚時に定めた面会交流を1回行わないごとに〇万円を別居親に支払う」というような金銭支払義務を課す命令を出します。これにより、同居親に対して「面会交流を実施しなければならない」という心理的な強制を与えて履行(実施)を促すことができます。

②間接強制を認めた判例

最高裁2013年3月28日判決では、連絡手段・面会交流の日時・頻度・毎回の時間の長さ・子供の引渡し方法・面会交流予定日に実施できなかった場合の代替日決定方法等が具体的に定められていた事例で、面会交流を拒否した同居親(母親)に対して、別居親(父親)に面会交流を1回拒否する度に5万円を支払う旨の命令を出しました。

(4)親権者変更の申立て(民法第819条6項)

また、親権者である同居親の監護状況や態度、別居親の監護態度や子供との関係によっては、別居親が家庭裁判所に親権者変更の申立てを行うこともできます。この点、福岡家庭裁判所2014(平成26)年12月4日審判では、親権者・監護権者に指定された母親が父親と小学生の子供との面会交流を拒否し続けた例で、父親への親権者変更申立てを認めています。この件で、家庭裁判所での試行的面接での子供の不自然な態度等の諸般の経緯から子供が面会交流を拒否するように母親が誘導していたと判断しました。父親が子供の監護に協力的であったことや父親の両親の協力も得られることが証明されており親権者として適格といえることや、既に履行勧告その他の手段を講じていたために面会交流を実現する手段として親権者変更しか残されていないこと等を理由として父親の申立てを認めました(ただし監護権者には引き続き母親が指定されました)。

(5)慰謝料請求

専ら同居親の方の事情で、離婚時に認めていた面会交流を拒否して全く連絡を取らせてくれなくなったというような場合には、面会交流権が侵害されたものとして不法行為に基づく慰謝料請求(民法第710条)を行うことが可能です。例えば、離婚後に同居親が再婚して、再婚相手との生活に影響することを理由に(それまで行っていた)面会交流をある時期から拒否し続けているという場合等は、慰謝料請求を行うことができる可能性があります。ただし、高額の請求は難しく、請求額の相場としては上限100万円程度です。また、面会交流を拒絶する正当な理由がある場合には、慰謝料請求自体が認められないこともあります。

慰謝料請求は請求書を内容証明郵便で送付し、請求書で定めた期限内に支払わない場合は慰謝料請求訴訟を提起することになります。請求額が140万円未満であれば(同居親側が居住する市町村を管轄する)簡易裁判所に訴訟提起し、それ以上であれば、地方裁判所に訴訟提起することができます。さらに、請求額が60万円以下で原告側が明確な証拠を揃えている場合は、簡易裁判所の少額訴訟手続により原則として1回のみの審理によって判決を得ることができます。

3  面会交流を拒否されて困ったら弁護士にご相談下さい

このように、離婚後に面会交流を拒否することに正当な理由が認められることもある一方で、正当な理由なく面会交流を拒否されてしまった場合に面会交流を求めるためには手間のかかる法的手段によらなければならず、別居親が個人でこれを行うには困難が伴います。離婚時に面会交流の取り決めを行ったにもかかわらず離婚後に拒否されてしまった場合は、離婚問題に強い弁護士に相談することで迅速に法的手段をとることが可能になります。

また、面会交流の請求者に過去にDVや虐待、連れ去り等があったなど、面会交流を拒否する正当な理由がある場合には、家庭裁判所での判断でも面会交流をするべきではないと判断することもあります。この場合にも、原則、認められる方向で進む面会交流調停において、例外的な事情を主張立証する必要があるので、離婚問題、面会交流に詳しい弁護士に相談することが必要でしょう。

まとめ

上述のように、面会交流については同居親側には連れ去りや別居親に悪口を言われる等の不安が残る一方、別居親側も最初から面会交流を認めてもらえない、あるいは認められたのに会わせてもらえない等、同居親側の対応に悩まされることがよくあります。

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する弁護士全員が離婚問題の専門家として、面会交流に関連するあらゆるご質問にお答えし、必要な法的手段をとるためのサポートを行わせて頂きます。当事務所の法律相談は初回30分無料でご利用頂けます。また、当日のご予約も可能で平日夕方のお仕事帰りの時間や土日にもお越し頂けます。お子様との面会交流のことでご質問がある方やトラブルに悩んでいる方は是非、当事務所の30分無料法律相談をお申込み下さい。

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